Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 工学基礎
組織性状診断

(S457)

皮膚組織における音響特性と振幅包絡特性の関係性の基礎検討

Basic study of relationship between acoustic characteristics and echo amplitude envelope property in skin tissues

大村 眞朗, 吉田 憲司, 秋田 新介, 小林 和人, 吉田 祥子, 穂積 直裕, 山口 匡

Masaaki OMURA, Kenji YOSHIDA, Shinsuke AKITA, Kazuto KOBAYASHI, Sachiko YOSHIDA, Naohiro HOZUMI, Tadashi YAMAGUCHI

1千葉大学大学院工学研究科, 2千葉大学フロンティア医工学センター, 3千葉大学医学部形成外科, 4本多電子株式会社研究部, 5豊橋技術科学大学環境・生命工学系, 6豊橋技術科学大学国際協力センター

1Graduate School of Engineering, Chiba University, 2Center for Frontier Medical Engineering, Chiba University, 3Department of Plastic, Reconstructive and Aesthetic Surgery, Chiba University, 4Research Department, Honda Electronics Co. Ltd., 5Department of Environmental and Life Sciences, Toyohashi University of Technology, 6International Cooperation Center for Engineering Education Devevelopment, Toyohashi University of Technology

キーワード :

【はじめに】
超音波エコー信号の特徴を指標化し定量評価するために,エコー信号の振幅包絡特性,周波数特性などに着目した信号解析法が応用されている.本報告では,生体組織の散乱特性を考慮した統計分布を用い,皮膚潰瘍組織からのエコー信号の振幅包絡特性を評価した.さらに,エコー信号の差に関係する組織性状を理解するために,顕微レベルでの音響特性解析と組織病理評価を検討し,エコー信号の特徴との関係性を検証した.
【対象と方法】
対象は開放性の皮膚潰瘍に対して細菌を接種し,急性の感染を発症した皮膚潰瘍モデルラット(38体)である.臨床用の診断装置と8.9 MHzのリニアプローブを用いて,RFエコー信号を取得した.取得した各ラインのRFエコー信号はHilbert変換により検波し,振幅包絡値の二次元マトリクスを得た.振幅包絡値のモーメントから統計分布の変数を算出し,エコー信号の振幅包絡特性を推定した.
また,エコー信号を取得した同一断面の摘出組織を凍結切片法により厚さ6μmで連続薄切し,音響特性解析および組織病理の観察を行った.音響特性解析は,バイオ超音波顕微鏡システムと100 MHz振動子を用い,組織病理はマッソントリクローム染色法を適用した.
【結果と考察】
検証結果の一例を図1に示す.図1(a)はエコー信号の振幅包絡値の二次元分布,(b)は散乱信号と干渉信号のパワー比に関連するHomodyned K分布の変数を(a)に重畳した二次元分布である.変数の推定値が1.0に近い部位(散乱信号のパワーが干渉信号より大きい)と0.5より低値(干渉信号のパワーが散乱信号より大きい)に分布した数mm2の構造が確認される.
図1(c)は音速分布,(d)は音速分布にリニアアレイプローブの点拡がり関数(PSF)を畳み込み積分した結果である.他部位に比して音速が平均的に約80 m/s速い部位が(c)において確認でき,(d)からも音速が速い構造が確認できる.
図1(e)は組織病理の弱拡大像および青と紫に染色された部位における強拡大像である.青染部は緩く部分的に離開した膠原線維の形成を認めるが,紫染部は数10 um径の炎症細胞が密かつランダムに分布しており,感染発症が認められる.
統計分布の変数の空間分布は,対応する断面の音速分布と組織病理像の特徴と一致し,非感染および感染組織におけるエコー信号の差は,音響特性および組織構造の双方の差が関係すると考えられる.今後,多症例での検証および音響インピーダンスなどの他の音響特性も理解する.