Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 工学基礎
エラストグラフィ

(S455)

速度成分抽出による超音波組織弾性イメージングの高精度化

Accurate Ultrasound Shear Wave Imaging with Velocity Component Filtering

吉川 秀樹, 山本 拓, 園山 輝幸, 井上 敬章

Hideki YOSHIKAWA, Taku YAMAMOTO, Teruyuki SONOYAMA, Noriaki INOUE

1(株)日立製作所研究開発グループ, 2(株)日立製作所ヘルスケアビジネスユニット

1Research & Development Group, Hitachi, Ltd, 2Healthcare Business Unit, Hitachi, Ltd

キーワード :

【背景】
音響放射圧を利用して生体内にせん断波を生成し,その伝搬速度から組織弾性の空間分布を画像化する技術(Shear wave imaging: SWI)が,癌や肝臓線維化を対象に普及しつつある.速度計測においては一定距離の波の伝搬を必要とするため,組織の不均質性や組織境界による方向成分の変化が計測精度の低下に直結する.この課題に対し,特に組織境界における反射波の影響を軽減する方法としてdirectional filter(DF)の利用が報告されている[1].DFは伝搬波面を時空間の2次元周波数空間に展開し,特定象限の成分を分離することで透過波を抽出する.これにより反射に伴う計測誤差を軽減できるが,反射以外の散乱または屈折による影響は残る.
【目的】
本報告ではSWIの高精度化を目的に,伝搬波面の2次元周波数空間において,透過波の主成分を判定し抽出する速度分離方式を提案する.
【実験】
中心に円形構造体(せん断波速度4 m/s,背景2 m/s)を含む生体模擬試料を用意し,音響放射圧を利用したせん断波計測を行なった.せん断波計測は円形構造体を含む約10 mm四方の範囲で行ない,伝搬経過を示すせん断波振幅の時空間データを構成した.続いて特定深度の時空間振幅データを周波数空間に変換し,主成分分析に基づく信号フィルタリングを行ない,実空間の振幅データに再変換した.この振幅データに基づき速度計測を実行してSWI画像(SWI-PV)を構成し,DFを利用する従来画像(SWI-DF)と計測精度を比較した.
【結果】
SWI画像と速度の標準偏差を比較した結果をfigure 1に示す.SWI-PVはSWI-DFに比べて全体的に速度分散が小さく,円形構造物の形状再現性が改善している.標準偏差の比較結果(fig. 1(d))によると,SWI-PVでは約75%の改善となる.反射波の影響は,伝搬方向を既定した速度計測の特性上,速度が負値になるなど局所的な外れ値として現れる.しかし今回のSWI結果は速度分布の不均一性として誤差が顕在化しており,SWI-PVは透過方向の方向分散,即ち散乱または屈折の影響を軽減した結果と推察される.
【結論】
速度計測において波の伝搬過程で生じる散乱や屈折は回避困難な誤差要因である.SWI-PVはこの誤差要因を効果的に軽減し,定量的組織性状評価法として腫瘍診断等への適用拡大が期待できる.
[1]P. Song, et al., IEEE Trans. Med. Img., 31,9(2012)1821