山崎 真有子, 中島 崇仁, 佐藤 亜矢子, 堀口 淳, 谷内 華菜, 石森 愛乃, 増子 勝郎, 山越 芳樹

Mayuko YAMAZAKI, Takahito NAKAJIMA, Ayako SATO, Jun HORIGUCHI, Kana TANIUCHI, Yoshino ISHIMORI, Katsurou MASUKO, Yoshiki YAMAKOSHI

¹群馬大学大学院理工学府, ²群馬大学大学院医学系研究科

¹Graduate School of Science and Technology, Gunma University, ²Graduate School of Medicine, Gunma University

キーワード :

【目的】
せん断波エラストグラフィは，せん断波の伝搬速度と組織弾性が密接な関係にあることを利用した，組織の硬さを映像化する方法の一つである．我々は，組織表面から加える機械的な加振によってせん断波を発生させ，カラードプラ法での流速推定の信号処理をせん断波の波面検出に用いた新たなせん断波エラストグラフィ（Color Doppler Shear Wave Imaging: CD SWI）を報告した^［1］．今回CD SWIを乳癌の画像化に適用したので報告する．
【方法】
CD SWIは連続的なせん断波を用いた実時間映像法であり，せん断波の振幅と周波数が特定の条件を満たす場合，超音波装置のカラーフロー映像（CFI）上にせん断波の波面が現れることを利用している．振幅条件は映像化に必要とするせん断波の振幅範囲であり超音波の周波数が6.5MHzのとき必要となる最小振幅は29μmで，体表組織であれば小型軽量の加振器で十分に励起できる．一方，周波数条件はCFIのパルス繰り返し周波数と関連し映像化に必要なせん断波の周波数を決めるが，複数の周波数が選択可能で実応用上問題は少ない．CFIのフレーム周波数の整数倍から0.1～数Hz程度ずらすことによって，組織内部のせん断波の伝播がCFI画像上で波状パターンの動きとして動画像で観察できる．この動画像をキャプチャし，各ピクセルに対して時間方向に周波数解析しせん断波の位相を算出しDirectional Filterで反射波の影響を除いた．超音波装置はAcuson S3000（Siemens），リニアプローブ18L6HDを使用した．小型のリニア振動モータを搭載した加振器先端に直径10mm，長さ20mmの円筒状のアタッチメントを取り付けた．加振器周波数は235.3Hzである．
【結果】
IRB承認の下で乳癌の映像化実験を行った．図の（a）は乳癌のBモード画像，（b）はせん断波の等位相線を描いた像（伝播像）で，ROI中央にある癌の部分では線間隔が相対的に広く，（c）の伝播速度像では癌の部分で伝播速度が高いことが分かる．
【結論】
CD SWI法による乳癌の画像化を行ったが，通常のエコー装置がそのまま使えるので簡便で低廉であること，映像化においてプローブを選ばないなどの特徴がある．実験結果から，乳癌の映像化に対するCD SWIの有効性が示唆された．
［1］山崎他，第89回日超音医抄録集，89-基-013，S542（2016）.