炭 親良, 武田 拓己

Chikayoshi SUMI, Takumi TAKEDA

上智大学大学院理工学研究科情報学領域

Information Science, Graduate School of Sophia University

キーワード :

【目的・対象】
過去に組織変位計測法として開発した相互相関ベースのクロススペクトル位相勾配法と反復位相マッチング法を用い，アレイ型開口を用いたビームフォーミングにおける位相収差と有効開口幅の自動決定方法を開発している．今回は，平面波送信時と，送信開口面合成時，開口面合成用エコーデータにおける結果を報告する．
【方法・結果】
有効開口幅は，各関心点Aから横方向に離れる方向にクロススペクトル位相勾配法を施して遅延時間を推定していき，（反復）マッチング処理されたエコー信号との時間差が閾値を超えて推定エラーと判定される手前までとして自動的に決めた．平面波送信においては，単独送信の場合，生成される波動は横方向に狭帯域となるため，ステアリング角度の異なる複数のステアリング送信を行ってコヒーレントなコンパウンディング処理を行うことを提案しているが，ステアリング角度が大きく異なるもの同士は結像しない．そこで，生成する波動のステアリング角度を定めた上で，そのステアリング角度の送信時の受信信号フレーム内に設定する関心点Aに対し，自分自身の受信信号フレームのみならず他の送信ステアリング角度の受信信号フレームを含めて同処理を施した．
寒天ファントムを対象としてリニア型アレイトラスデューサ（7.5MHz）を用いてイメージングした．図1に開口面合成の際の（a）音速一定の仮定の下での幾何学的なビームフォーミングと反復回数（b）3回，（c）10回，図2に平面波の正面方向の単独送信の（a）幾何学と（b）反復回数3回，平面波のステアリング送信（正面0°～±30°，1°刻み）の際の（c）幾何学と（d）反復回数3回のコンパウンデングの結果を示す．幾何学的処理に比べ，また，反復位相マッチングの回数が多い方が，格段に高い空間分解能とコントラストが得られ，また，コンパウンディングにおいて結像を得た．
【考察・結論】
クロススペクトル位相勾配法は相互相関法に比べて計算量は少ないが，実時間性に乏しい．しかし，デジタルならではに精密検査用エコーイメージングを拓く可能性が確認された．計算時間の短縮化は重要であり，今後には自己相関法と反復位相マッチング法の組み合わせを実施する．また，有効開口幅の決定に相関値を用いることも試みる．また，本位相収差補正をICAやMinimum Variance法を用いたビームフォーミングに応用する．