Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 工学基礎
イメージング・画像解析

(S452)

胸椎麻酔支援のための超音波による高精度なヒト脊椎表面の描出

Accurate imaging of human vertebral surface with ultrasound for thoracic anesthesia

高橋 一生, 横山 智大, 瀧 宏文, 大西 詠子, 山内 正憲, 金井 浩

Kazuki TAKAHASHI, Tomohiro YOKOYAMA, Hirofumi TAKI, Eiko ONISHI, Masanori YAMAUCHI, Hiroshi KANAI

1東北大学大学院医工学研究科, 2東北大学大学院工学研究科, 3東北大学大学院医学部麻酔科

1Graduate School of Engineering, Tohoku University, 2Graduate School of Biomedical Engineering, Tohoku University, 3Department of Anesthesiology and Perioperative Medicine, Tohoku University School of Medicine

キーワード :

【背景】
硬膜外麻酔は意識消失を伴わない区域麻酔であり,首から下の任意の部位の神経をブロックする.カテーテルを用いる継続した硬膜外麻酔は術中の鎮痛,術後の早期回復のための効果的治療として中心的な役割を果たしている.硬膜外麻酔の穿刺前に,麻酔施行者はしばしば超音波画像を確認するが,特に胸椎の構造は複雑であり十分な情報を得ることができず,リアルタイム超音波ガイダンスによる麻酔針穿刺は未だに実施困難である.本研究では,胸椎領域の脊椎における超音波プローブの各素子の受信RFデータを用いた新しいイメージング手法を提案する.提案法による胸椎領域の高精度脊椎表面描出を開発することにより,施行経験が浅い医師に対する安全な硬膜外麻酔施行の支援技術実現を目指す.
【方法】
提案法である送信ビーム幅と送信方向を用いたエンベロープ法はバイスタティックイメージング技術を用いる.送信には幅の狭いビームを使用し,隣接する対象物から反射するエコーの数を減らすことで従来のエンベロープ法よりもSN比を向上できる.本手法は,送信位置と受信位置を2つの焦点とし,経路長を長軸の長さとする楕円が対象物表面に接することを利用する.この楕円を多数の送信位置と受信位置の組み合わせから構成し,複数の楕円を送信ビーム幅内で描出することにより対象物表面を推定する.
ヒト胸椎の描出を提案法と従来のB-modeで行い,比較検討を行った.素子データを取得可能な超音波診断装置を使用した.リニアアレイプローブを使用し,ラテラル方向の送信ビーム角度を-20°~+20°とし,5°間隔で計測を行った.また,各手法において全ての送信ビーム角度をコンパウンドし,胸椎表面画像を生成した.
【結果】
図にそれぞれB-mode像を用いたコンパウンド画像と提案法により描出されたコンパウンド画像を示す.B-mode像では脊椎表面を深さ約26 mmに確認することができるが,深さ10~24 mmに存在する筋組織エコーが強く,胸椎表面位置の把握が困難である.一方,提案法は筋組織の影響を抑えながら脊椎表面を深さ約26 mmに選択的に描出した.筋組織に対する脊椎表面のコントラスト比を計算した結果,B-modeでは10.2 dB,提案法では31.1 dBとなり,提案法でSN比が向上した.
【結論】
提案法は脊椎表面を従来のB-mode像よりも鮮明に描出することができた.以上より,安全で正確な硬膜外麻酔の施行のための脊椎描出に提案法が適する可能性が示唆された.