Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 工学基礎
イメージング・画像解析

(S451)

超音波CTによる微小石灰化の検出手法の開発とファントムによる効果検証

Method and validation of microcalcification detection by ultrasound computed tomography

山中 一宏, 寺田 崇秀, 鈴木 敦郎, 坪田 悠史, 武 文晶, 川畑 健一

Kazuhiro YAMANAKA, Takahide TERADA, Atsuro SUZUKI, Yushi TSUBOTA, Wenjing WU, Ken-Ichi KAWABATA

株式会社日立製作所研究開発グループ

研究開発グループ, 株式会社日立製作所

キーワード :

【目的】
対策型乳がん検診では,マンモグラフィが推奨されるが,日本人に多いデンスブレストに対して低感度,圧迫痛を伴うなどの課題がある.超音波エコー検査はそれらを解決すると期待されているが,技師依存性が高いため精度管理が課題となる.我々は,自動測定により再現性の高いBモード画像に加えて,音速等の定量指標を提示可能な超音波CTの開発を行っている.音速画像の再構築では乳房を透過した超音波の計測を必要とするため,超音波CTでは1-3MHzの比較的低周波数の超音波を使用する.従来の検診での診断指標であった微小石灰化について,Bモード画像上での検出感度低下が懸念される.本発表では,超音波反射信号の空間分布の解析により微小石灰化の検出感度を向上させる手法を開発し,本手法の有効性を実験的に検証した結果を報告する.
【対象と方法】
実験に用いたプローブは直径10 cmのリングアレイ型振動子(中心周波数:1.5 MHz,素子数:1024)である.平面波をリングアレイ上の32の異なる開口から送信し,最大512素子での受信信号から開口合成によりBモード画像を生成した.さらに,受信信号強度分布の空間異方性を解析し,等方的な散乱に対して高い輝度値を示すような微小石灰化抽出画像(MC画像)を生成した.測定したサンプルは,ゲルファントムとブタ乳腺(切除検体)である.どちらのサンプルにも,微小石灰化模擬体としてヒドロキシアパタイト(HAP)を埋め込んである.
【結果と考察】
ゲルファントムで,微小石灰化と背景部分のコントラストノイズ比(CNR)は,Bモード画像ではCNR=1.7,MC画像ではCNR=3.7と,微小石灰化検出感度の顕著な向上が見られた.さらに,一定の閾値でMC画像を二値化することにより,機械的にHAPを抽出可能であった.ブタ乳腺のBモード画像と(図a),ゲルファントムの実験をもとに設定した閾値で二値化したMC画像(図b)を図に示す.MC画像の高輝度点はHAPを埋め込んだ領域(図中点線領域内)に集中して分布しており,本手法は乳腺のような複雑な生体構造中においても微小石灰化の抽出に有用であると考えられる.
【結論】
微小石灰化とその周囲環境を模擬した実験結果から,本提案手法によって超音波CTにおける微小石灰化の検出能の顕著な向上が期待できる.今後は臨床検体の測定等による臨床的価値の検証が必要である.