Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 工学基礎
高周波

(S449)

バイオ超音波顕微鏡を用いたリンパ浮腫組織の音響特性解析

Acoustic properties analysis of lymphedema using bio-acoustic microscopy

本田 瑶季, 吉田 憲司, 秋田 新介, 山路 佳久, 真鍋 一郎, 山口 匡

Tamaki HONDA, Kenji YOSHIDA, Shinsuke AKITA, Yoshihisa YAMAJI, Ichiro MANABE, Tadashi YAMAGUCHI

1千葉大学工学研究科, 2千葉大学フロンティア医工学センター, 3千葉大学医学部形成外科, 4千葉大学医学研究院長寿医学

1Graduate School of Engineering, Chiba University, 2Center for Frontier Medical Engineering, Chiba University, 3Department of Plastic Surgery, Chiba University, 4Graduate School of Medicine,Department of Disease Biology and Molecular Medicine, Chiba University

キーワード :

【目的】
我々はこれまでに,臨床用超音波診断装置での数MHz帯でのエコー信号解析と,バイオ超音波顕微鏡を用いた数百MHzでの音響特性解析の成果を複合し,肝臓,皮膚潰瘍,リンパ節などを対象にした超音波組織性状評価法を開発している.これらの技術をリンパ浮腫に適用し,リンパ管の線維化や脂肪新生の定量評価法を確立することで,重症度判定,治療効果判定,合併症の鑑別診断に対する客観的指標の構築が可能になると考えている.本研究では,80 MHzおよび250 MHzの超高周波超音波を用いてリンパ浮腫組織を観察し,各組織の音響インピーダンスを算出した.
【方法】
インドシアニングリーンによるリンパ管機能検査でリンパの運搬機能の低下が観察され,リンパ浮腫の診断が確定した患者をリンパ浮腫群,軟部組織切除を伴う手術を行うリンパ浮腫を罹患していない患者を非リンパ浮腫群とした.リンパ浮腫群20例(腹部5例,大腿部10例,下肢10例),コントロール群15例(全て腹部)について,超音波顕微鏡を用いて音響インピーダンスを計測した.同検体から作製した標本の組織学的評価を併せて実施することで,組織構造レベルでの音響特性の差異を検討する.また,検体摘出前に超音波エコー検査を実施した.リンパ浮腫群については,浮腫が確認される患部と浮腫が確認されない健常部のエコーデータを取得した.
【結果】
バイオ超音波顕微鏡により取得した音響インピーダンスの二次元分布像から,皮下組織の構造を明瞭に観察できることを確認した.特に脂肪組織を含む場合において,脂肪組織特有の特徴的な網目状のテクスチャが確認された.これは,他の組成と比較して脂肪の音響インピーダンスが低いためと想定される.ただし,リンパ浮腫群と非リンパ浮腫群の間に明確な差異は現段階で確認されなかった.リンパ浮腫群の術前エコー検査について,患部と健常部ではエコー像に差異が確認された.特に右大腿部においてリンパ浮腫を発症した一例において,患部における皮下組織の層状構造の不明瞭化,エコー強度の増強を認めた.