Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 工学基礎
高周波

(S449)

500 MHz超音波を用いた軟組織の音響特性評価

Fine-resolution evaluation of acoustic properties at 500-MHz for soft tissues

伊藤 一陽, 田村 和輝, 丸山 紀史, 吉田 憲司, 山口 匡

Kazuyo ITO, Kazuki TAMURA, Hitoshi MARUYAMA, Kenji YOSHIDA, Tadashi YAMAGUCHI

1千葉大学工学研究科, 2千葉大学フロンティア医工学センター, 3千葉大学医学研究院

1Graduate School of Engineering, Chiba University, 2Center for Frontier Medical Engineering, Chiba University, 3Graduate School of Medicine, Chiba University

キーワード :

【1.目的】
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の早期診断法として超音波が有効視されているが,脂肪沈着の有無についての判定は高精度化してきている一方で脂肪肝とNASHの弁別が困難であるため,確定診断には肝生検に頼らざるを得ないのが現状である.そこで我々は,100 MHz以上の超音波を用いて細胞小器官単位での音響特性を把握し,多種の微小組織構造が混在したNASH肝におけるエコー信号の性質を解明し,その知見を臨床でのエコー診断に適用することを検討している.
そこで本報告では,エコー信号の性質を決定する主要因の一つであり,生体組織固有の物性値である音速に着目し,中心周波数500 MHzの超音波を用いてラット肝臓を計測し,組織構造と音響特性との関係性について検討した.
【2.対象と方法】
計測対象は正常肝モデルラット(Slc: SDオス)とし,ホルマリン固定後に5μmに薄切した試料をスライドガラス上に固定した.計測は自作のスキャンシステムを使用し,開口方向の分解能が4μm以下である中心周波数500 MHzのZnO振動子を組み込んだ.振動子は,水を介して試料下から振動子を2次元走査することで試料表面,および試料とスライドガラス界面からのエコー信号を収集した.各走査線のエコーデータは12-bitのデジタイザを用いて2.5 GHzでサンプリングされており,1.0 mm×1.0 mmの範囲を,1000 pixel×1000 pixelの情報として収集した.また,計測後の試料に対してHE染色を施し,光学顕微鏡による観察を行った.また,収集したエコー信号に対し位相および強度に着目し,音速を算出した(Hozumi et al. 2004).
【3.結果と考察】
Fig.1に,算出された音速および対応した病理像を示す.病理像との対比により,細胞核に対応する箇所が視認可能であり,その箇所の音速は1600[m/s]前後と周囲の細胞質および類洞周囲と比較して低い値をとった.以上より,開口方向の分解能が4μm以下の振動子を用いて計測をすることで,光学顕微鏡と同程度の鮮明な組織像が取得可能であり,かつ組織によって音響特性が異なることが示唆された.
【謝辞】
本研究の一部はJSPS科研費15H03030,25460674の助成を受けた.
【参考文献】
Hozumi N, et al. Ultrasonics 2004;42:717722.