Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 工学基礎
高周波

(S447)

高周波超音波により散乱特性解析した赤血球集合体サイズ推定に関する検討

Estimation of the size of erythrocyte aggregates scattered by high-frequency ultrasound

榊 紘輝, 瀧 宏文, 八代 諭, 長澤 幹, 石垣 泰, 金井 浩

Hiroki SAKAKI, Hirofumi TAKI, Satoshi YASHIRO, Kan NAGASAWA, Yasushi ISHIGAKI, Hiroshi KANAI

1東北大学大学院医工学研究科, 2東北大学大学院工学研究科, 3岩手医科大学内科学講座糖尿病・代謝内科

1Graduate School of Biomedical Engineering, Tohoku University, 2Graduate School of Engineering, Tohoku University, 3The Department of Internal Medicine Division of Diabetes and Metabolism, Iwate Medical University

キーワード :

【目的】
赤血球集合とは血流の低ずり速度状態で高分子化合物の存在下に起こる赤血球同士の可逆的な接着現象である.集合体で一次元的に連なることを連銭形成といい,連銭の側面に赤血球または他の連銭の枝がつくと三次元的な集合塊を形成する.このように過度な赤血球集合はアテローム性動脈硬化や糖尿病などの様々な循環器疾患と病理学的に関連しているため,血液性状の評価はそのような疾患の早期発見に有用であると言える.本報告では,ヒトin vivo計測を行い,超音波散乱特性を解析することにより赤血球集合を非侵襲かつ定量的に評価する.
【方法】
赤血球集合体を球散乱体と仮定すると,観察対象組織における散乱体の半径が入射波の波長より十分小さい場合はレイリー散乱を起こすと考えられ,後方散乱パワーは周波数依存性を有して周波数fの4乗に比例する.散乱体の半径が入射波の波長と同等の場合は反射を起こすと考えられ,後方散乱パワーの周波数依存はなく,fの0乗に比例する.波長に対する散乱体サイズによる超音波後方散乱パワーの周波数特性のこれらの差異を指標に,計測した散乱特性を理論特性と最小二乗法で整合することで,最も近い周波数特性をもつ散乱体サイズを推定する.計測機器は超音波診断装置(中心周波数:40 MHz)を用いて,ヒト手背静脈を対象にin vivo計測を行った.被験者は糖尿病患者と健常者で行い,まず血管後壁に焦点を合わせて正規化に用いる信号を取得し,その後血管内腔に焦点を合わせて赤血球を対象とした信号を取得した.血管内腔からの信号は10秒ごとに1フレーム取得し,計3分間で19フレーム測定を行った.最初の1分間は安静のまま,その後2分間は上腕を150 mmHgで駆血して血流を低ずり速度状態にした.
【結果】
血管内腔から取得した散乱パワースペクトルにおいて,全ての被験者で,安静時よりも駆血時の方が最大強度は高くなり,血管後壁から取得した反射パワースペクトルとのピーク周波数の差は小さくなった.これより,低ずり速度状態では散乱特性をもたなくなっていることが分かった.また,複数の被験者において,各フレームで推定されたサイズと両パラメータの間に相関が見られた.推定サイズと最大強度の相関の傾きは被験者によって異なった.本結果から,推定サイズと最大強度およびピーク周波数の差において相関があり,本評価システムの有意性が示唆された.