Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 工学基礎
心筋・血管計測

(S445)

超音波速度変化法を用いた頸動脈不安定プラーク診断のための一体化プローブの開発

Development of combined probe for diagnosis of unstable vessel plaque using ultrasonic velocity change imaging method

熊谷 勇汰, 青谷 悠平, 堀 誠, 横田 大輝, 金森 柊人, 亀田 雅伸, 和田 健司, 松中 敏行, 堀中 博道

Yuta KUMAGAI, Yuhei AOTANI, Makoto HORI, Daiki YOKOTA, Syuto KANAMORI, Masanobu KAMEDA, Kenji WADA, Toshiyuki MATSUNAKA, Hiromichi HORINAKA

1大阪府立大学大学院工学研究科, 2TU技術研究所研究部

1Dept. of Physics and Electronics, Osaka Prefecture University, 2Research department, Institute of TU Technology

キーワード :

【目的】
血管プラークは,動脈硬化の進行により血管内腔に生じる隆起病変であり,その不安定性は内部の脂質コアの大きさと分布に関係すると考えられている.我々は,超音波速度の温度依存性が生体内の脂肪と他の組織とでは異なるという特性を利用し,脂肪領域を加温することにより生じる超音波速度変化を断層像として表示する手法(超音波速度変化法と呼ぶ)を提案し,疑似血管プラークを対象に実験を行ってきた.
これまでは画像用の超音波トランスデューサと加温用のトランスデューサをそれぞれ単体で用いていたため,加温領域と画像診断領域を一致させることが難しく,臨床応用の観点から問題となっていた.そこで今回は,金属板音響ミラーの周波数特性を利用した一体化プローブを試作し,頸動脈ファントムを用いた検証実験を行った.
【方法】
試作した一体化プローブの構造をFig.1(a)に示す.プローブ内部には45度に傾けた厚さ0.2 mmの銅板が配置してあり,側面の加温用トランスデューサからの超音波(2 MHz,直径2.9 cm)を反射する.一方,上部の画像測定用の超音波(7.5 MHz)はこの銅板をほぼ透過するため,加温部位に一致した領域を画像診断することができる.この一体化プローブを適用する頸動脈ファントムは,生体ファントム(OST社製)に直径1 cmの穴をあけ,その内部にプラークを模した牛脂を含む羊腸を挿入して作製した.実験では,穴の部分に水を流して血流を模擬し,2 MHzの加温用超音波で60秒間加温を行い,加温前後の超音波振幅波形の差分情報から測定領域内で生じた超音波速度変化を算出した.
【結果】
得られたBモード画像および超音波速度変化画像をFig.1(b)に示す.Bモード画像より隆起部位の存在(破線部)が確認できるが,その性状情報は得られない.一方,超音波速度変化画像では,温度上昇に伴い超音波速度が減少する脂肪領域(牛脂挿入部)がグレイスケールで明確に表示されており,その領域は隆起部位と一致している.このことから,作製した一体化プローブが頸動脈不安定プラークの識別に有用であることがわかった.
【結論】
頸動脈不安定プラークの診断をめざして,加温用と画像用の2個の超音波トランスデューサを組み合わせた一体化プローブを作製した.このプローブを頸動脈ファントムに適用し,血流を再現した条件においても脂肪領域の検出が可能であることを示した.