Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般口演 工学基礎
心筋・血管計測

(S444)

血管壁近傍の平行流モデルに基づくWall Shear Stress分布の超音波計測

Echographic measurement of Wall Shear Stress map based on parallel flow model near vascular wall

清水 一力, 田中 智彦, 岡田 孝, 関 佳徳, 西山 知秀

Motochika SHIMIZU, Tomohiko TANAKA, Takashi OKADA, Yoshinori SEKI, Tomohide NISHIYAMA

1株式会社日立製作所研究開発グループ, 2株式会社日立製作所ヘルスケアビジネスユニット

1Research & Development Group, Hitachi, Ltd., 2Healthcare Business Unit, Hitachi, Ltd.

キーワード :

【目的】
動脈硬化は,進展に伴い脳梗塞や心筋梗塞を発症するため,早期発見が重要である.初期の動脈硬化は,血管壁に作用するWall Shear Stress(WSS)が0.4 Pa以下のときに生じる.本研究では,動脈硬化の高リスク群判別を目的とし,超音波撮像に基づくWSS分布の計測法を提案する.動脈硬化診断の実現には,複雑形状の血管で局所的な低WSS領域を発見することが要求される.また,高リスク群の偽陰性判定率を5%に抑えるには,計測誤差を35%以内とすることが求められる.
【手法提案】
WSSは,壁面における血流の速度勾配に比例する.しかし,超音波による血流計測は,壁近傍の精度低下,計測値のばらつき,壁面位置の不確定性などの誤差要因を含む.WSS計測の実用化における課題は,これらの誤差要因に対しロバスト性を有する計測法の確立である.本研究では,WSS計測で重要となる壁近傍の血流を平行流モデルで置き換え,実測値からモデルの係数を決定することによりWSSを推定する.
【検証方法】
本研究ではVector Flow Mapping技術で計測した速度分布からWSSを算出した.提案手法に基づき,壁近傍の速度勾配を一次関数で置き換え,実測した速度勾配分布の極大点と変曲点を通るように係数を定めた.また,壁座標を未知数とし,速度と速度勾配に関する連立方程式を解くことでWSSを求めた.提案手法の計測性能は,頸動脈ファントムを用いたin vitro実験により評価した.その際,Particle Image Velocimetryで計測した速度分布から算出されるWSSを真値とした.また,超音波撮像を用いた従来手法であるShear Rate法でもWSSを計測し,計測性能を比較した.超音波撮像とレーザ光学系の2系統で計測するため,ファントムは透過性軟質ウレタン製とし,散乱体を混ぜたポリエチレングリコールを1 Hzの拍動流で流した.
【検証結果・考察】
真値との比較の結果,従来手法が計測誤差41%であるのに対し,提案手法は計測誤差27%であり目標値を達成した.また,ファントム壁面上のWSS分布を計測した結果,分岐部でWSSが0.4 Pa以下となる様子が観測された(図1).湾曲した血管では血流のよどみが発生するため,低WSS領域が生じたと考えられる.
【結論】
血管壁近傍の平行流モデルに基づくWSS分布計測法を提案した.提案手法を用いることにより,誤差要因を含む速度分布から高精度にWSSを計測できることを確認した.また,血管形状に起因する局所的な低WSS領域を検出できることを確認した.