Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

奨励賞演題 奨励賞
産婦人科 奨励賞

(S439)

分娩開始時の臍帯静脈流量が Fetal heart rate pattern に与える影響

The estimation of non reassuring fetal status during labor by umbilical venous blood flow measurement

大場 智洋, 仲村 将光, 瀧田 寛子, 新垣 達也, 川嶋 章弘, 松岡 隆, 関沢 明彦

Tomohiro OBA, Masamitsu NAKAMURA, Hiroko TAKITA, Tatsuya ARAKAKI, Akihiro KAWASHIMA, Ryu MATSUOKA, Akihiko SEKIZAWA

昭和大学医学部産婦人科学講座

School of medicine Obstetric and Gynecology, Showa University Hospital

キーワード :

【目的】
胎児well-beingは胎盤-臍帯-胎児の循環によって維持されており,そこに急性あるいは慢性の循環障害が生じることで胎児機能不全が起きると考えられる.また,胎盤-臍帯-胎児循環が障害された場合には,胎盤機能が障害され,その結果として臍帯静脈流量が減少すると考えられる.
我々は,臍帯静脈流量が少ない症例では,経腟分娩中の胎児機能不全の頻度が高くなるのではないかという仮説を立て,そのことの証明を本研究の目的とした.
【方法】
2015年4月から2016年1月に分娩目的で入院した妊娠37-41週の妊婦を対象に,分娩目的での入院時に臍帯静脈の径および流量を測定した.臍帯静脈径は,超音波ビームが臍帯静脈壁に垂直に当たるように描出し,on-to-onで測定した.また,臍帯静脈流速は臍帯静脈の中心でサンプルボリューム幅を2 mmとし,流れに対して30度以内で測定した.臍帯静脈径および流速より算出した臍帯静脈流量(ml/s)の指標となる値について以下の式で求めた.[臍帯静脈径(cm)/2]×[臍帯静脈径(cm)/2]×3.14×臍帯静脈流速(cm/s)
臍帯静脈流量指標値10%tile値未満であった群をCase,それ以外をControlとして,経腟分娩中の胎児心拍数モニタリングの波形,胎児機能不全(NRFS)による急速遂娩の頻度,アプガースコア(1/5分値),臍帯動脈血pHを検討した.
胎児心拍数モニタリング波形については,分娩第1期の最後の子宮収縮30回と分娩第2期の全収縮で同一検者が評価した.分娩第1期で帝王切開術した例は手術直前の子宮収縮30回を調査した.一過性徐脈が発生する子宮収縮の割合(%)は以下の式で求めた.一過性徐脈の頻度/子宮収縮回数×100
一過性徐脈は,variable deceleration(VD),Early deceleration(ED),Late deceleration(LD),Prolonged deceleration(PD),日本産婦人科学会レベル分類3,4,5を産婦人科診療ガイドライン(産科編2014)に準じて判読した.急速遂娩はレベル4以上で施行した.
【結果】
143例を検討した.Case(14例)vs Control(129例)の検査時の妊娠週数は39.6±1.0 vs 39.2±0.9(ns)であった.一過性徐脈が発生する子宮収縮の割合(%)は,第1期:VD 11.9±12.5%vs 9.9±14.8%(ns),ED 11.4±18.2%vs 5.3±9.0%(ns),LD 5.7±16.2%vs 1.3±3.9%(ns),PD 0.7±2.6%vs 0.9±3.3%(ns),日産婦レベル3 5.2±13.0%vs 2.3±5.0%(ns),レベル4 1.1±4.4%vs 0.5±2.4%(ns),レベル5の症例はなかった.第2期:VD 28.5±22.4%vs 25.5±21.2%(ns),ED 6.1±7.0%vs 4.5±6.2%(ns),LD 12.7±17.4%vs 3.7±8.1%(p<0.05),PD 4.3±5.0%vs 3.3±6.1%(ns),日産婦レベル3 12.5±12.1%vs 8.8±13.4%(ns),レベル4 7.0±12.0%vs 2.5±5.8%(ns),レベル5 0.6±1.7%vs 0.1±1.2%(p<0.05),NRFSによる帝王切開術例は0%vs 1.5%(2)(ns),NRFSによる鉗子または吸引分娩を施行した例は28.4%(4)vs 3.1%(4)(p<0.05),アプガスコア1分値<7 14.2%(2)vs 1.5%(2)(p<0.05),5分値<7 0%vs 0%(ns),臍帯動脈血pH<7.2 14.2%(2)vs 1.5%(2)(p<0.05)であった.
【考察】
臍帯静脈流量が少ない例は分娩第2期でのLate decelerationや日産婦レベル5,NRFSによる急速遂娩,アプガースコア1分値<7,臍帯動脈血pH<7.2が有意に多い結果となった.臍帯静脈流量が少ない例で,分娩第2期のLate decelerationが増加したことは,臍帯静脈流量が減少した胎児では,胎児の予備能力が減弱しており,分娩に伴うストレスに対応しきれない症例が存在するため胎児機能不全を高頻度に発症すると推察された.