鎌田 研, 竹中 完, 大本 俊介, 宮田 剛, 三長 孝輔, 山雄 健太郎, 今井 元, 筑後 孝章, 安田 卓司, 工藤 正俊

Ken KAMATA, Mamoru TAKENAKA, Shunsuke OMOTO, Takeshi MIYATA, Kosuke MINAGA, Kentaro YAMAO, Hajime IMAI, Takaaki CHIKUGO, Takushi YASUDA, Masatoshi KUDO

¹近畿大学医学部附属病院消化器内科, ²近畿大学医学部附属病院病院病理部, ³近畿大学医学部附属病院外科

¹Department of Gastroenterology and Hepatology, Kindai University, ²Department of Pathology, Kindai University, ³Department of Surgery, Kindai University

キーワード :

【背景】
上部消化管粘膜下腫瘍（SMT）の治療方針を決定する上で，手術適応であるGISTの診断が重要となる．超音波内視鏡下穿刺吸引術（EUS-FNA）はSMTの鑑別診断法として広く普及しているが，診断能には限界がある．
【目的】
SMTの鑑別診断における造影ハーモニック超音波内視鏡（CH-EUS）の有用性を検討すること．
【対象】
2008年6月から2015年3月までに，当院でEUS-FNAおよびCH-EUSを施行後に外科的手術を施行したSMT病変73例を対象とした．当院のSMTの手術適応は，画像的にGISTを否定できない5cm以上の病変，EUS-FNAでGISTと診断された病変である．
【方法】
CH-EUSによる病変内部の造影パターンを血流量（hyper-enhancement/hypo-enhancement）と均一性（homogeneous-enhancement/inhomogeneous-enhancement）で評価し，GISTとGIST以外のSMTで各造影パターンに差がみられるかを検討した．GIST以外のSMTと比較し，GISTで有意に多くみられる造影パターンをGISTと定義した際の診断能を算出した．EUS-FNAによる検体採取率およびGISTの診断感度を算出し，CH-EUSを付加することによるGISTの診断感度の上昇率を検討した．
【結果】
外科切除後の病理診断にて，58例はGIST，15例はGIST以外のSMT（脂肪腫2例，平滑筋腫5例，神経鞘腫5例，グロムス腫瘍2例，異所性膵1例）と診断された．腫瘍径2cm未満は20例，2cm以上5cm未満は46例，5cm以上は7例であった．CH-EUSによる血流量の検討では，GISTの84.5％（49/58），GIST以外のSMTの26.7％（4/15）がhyper-enhancementを呈し，両群間で有意差を認めた（P＜0.001）．CH-EUSによる均一性の検討では，GISTの36.2％（21/58），GIST以外のSMTの13.3％（2/15）がinhomogeneous-enhancementを呈し，両群間で有意差は認められなかった（P=0.165）．
hypoかつhomogeneous-enhancementを呈したGISTは，全体のうち5.2％（3/58）であった．2cm未満のSMTで外科切除が施行された症例は全例GISTであり，85％（17/20）がhyper-enhancement，10％（2/20）がinhomogeneous-enhancementを呈した．5cm以上のGISTは，全例inhomogeneous-enhancementを呈した．CH-EUSにて血流量がhyper-enhancementを呈する病変をGISTと定義した場合の診断能は，感度84.5％，特異度73.3％，正診率82.2％であった．EUS-FNAによる検体採取率は，全体で86％，GISTで95％，GIST以外のSMTで53％であった．EUS-FNAによるGISTの診断感度は95％であり，CH-EUSによる診断を加味することで診断感度が100％に上昇した．
【結語】
CH-EUSでhyper-enhancementを呈するSMTはGISTである可能性が高く，EUS-FNAでGISTの診断が得られなくても外科切除を考慮する必要がある．EUS-FNAの検体採取率はGISTと比較し，GIST以外のSMTで低く，EUS-FNAとCH-EUSを併用して診断することで，より適切なSMTの治療方針の決定が可能になると考えられる．