Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

奨励賞演題 奨励賞
消化器 奨励賞

(S437)

膵嚢胞症例背景膵のShear wave elastography弾性評価の意義

Elastic evaluation of pancreas parenchyma with pancreatic cysts using shear wave elastography

小屋 敏也, 廣岡 芳樹, 川嶋 啓揮, 大野 栄三郎, 石川 卓哉, 河合 学, 須原 寛樹, 橋詰 清孝, 中村 正直, 後藤 秀実

Toshinari KOYA, Yoshiki HIROOKA, Hiroki KAWASHIMA, Eizaburou OHNO, Takuya ISHIKAWA, Manabu KAWAI, Hiroki SUHARA, Kiyotaka HASHIZUME, Masanao NAKAMURA, Hidemi GOTO

1名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学, 2名古屋大学医学部附属病院光学医療診療部

1Gastroenterology and Hepatology, Nagoya University Graduate School of Medicine, 2Department of Endoscopy, Nagoya University Hospital

キーワード :

【目的】
Intraductal papillary mucinous neoplasm(IPMN)を含む膵嚢胞症例は嚢胞と別部位に膵癌を生ずる危険因子である.膵嚢胞症例背景膵実質と正常膵実質でShear wave elastographyによる弾性率(kPa)(以下SW値)を測定しその意義を検討した.
【対象】
経腹壁超音波,超音波内視鏡(EUS)あるいは造影CTで膵に異常のない症例を正常膵,膵嚢胞を認めた症例を膵嚢胞症例とした.2012年10月から2016年6月までPhillips社製iU22を使用してSW測定を行った217例(正常膵103例,膵嚢胞症例背景膵114例)を対象とした.
【方法】
B-mode画像で膵を描出し,血管や主膵管を避けROIを設定後,既報のごとく5回測定後の中央値をSW値とした.膵嚢胞症例背景膵に対し可能症例では病変の頭側と尾側で測定した.検討項目は次の如くである.①正常膵,膵嚢胞症例背景膵におけるSW値に対する年齢,性別,BMI,膵と体表間の距離の各因子との相関関係,②正常膵と膵嚢胞症例背景膵におけるSW値,③嚢胞の頭側と尾側のSW値,④EUS実施正常膵22例,膵嚢胞症例背景膵114例において慢性膵炎のEUS所見とされるRosemont分類の膵実質所見および膵管所見とSW値の関連.統計手法:①SWと性比は相関比,SWと年齢,BMI,膵と体表間の距離はSpearmanの順位相関係数,②③④はMann-Whitney U検定.
【結果】
①正常膵では年齢とSW値に相関が認められたが,膵嚢胞症例背景膵では全ての因子でSWとの相関は認めなかった.②正常膵と膵嚢胞症例背景膵のSW値中央値および四分位数範囲はそれぞれ3.17(2.21-4.69)kPaと5.16(3.69-7.64)kPaであった(P<0.001).また,①で検討した相関因子を含めて,正常膵,膵嚢胞症例背景膵のSW値を目的変数とした重回帰分析を行ったところ,膵嚢胞の存在のみが,有意差が認められる結果であった(P<0.001).③頭側,尾側のSW値中央値はそれぞれ4.62(3.17-6.71)kPa,5.45(3.87-8.26)kPaと差を認めなかった(P=0.175).④EUS実施正常膵22例のうちRosemont分類のEUS所見陽性例は5例(22.7%)であり,早期慢性膵炎に該当する症例は認めなかった.膵嚢胞症例背景膵では114例中60例(52.6%)に慢性膵炎EUS所見が認められた.Lobularity without honeycombing陽性例SW値は9.09(5.28-13.47),陰性例SW値は5.15(3.51-7.37)であった(P=0.0013).また,Hyperechoic foci without shadowing陽性例SW値は8.06(5.13-13.82),陰性例SW値は5.13(3.51-7.50)であった(P=0.0038).
【考察及び結論】
膵嚢胞症例背景膵は正常膵に比し有意にSW値が高く,膵嚢胞存在部位の頭側と尾側で差を認めなかった.既報の如くSW高値は膵線維化を反映している(Pancreatology 16:1063-68; 2016).IPMNを含む膵嚢胞症例の背景膵はSW値が高値であり,膵嚢胞症例に対するSW値測定は,膵嚢胞の存在に加え背景膵線維化の進行した膵癌高危険群の抽出に有用である.