Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

奨励賞演題 奨励賞
消化器 奨励賞

(S437)

Laennec fibrosis staging systemによる肝硬変症例の細層別化とVTQによる評価

Liver stiffness measurement using VTQ correlates Laennec fibrosis sub-classification in patients with cirrhosis

小島 優子, 舘 佳彦, 平井 孝典

Yuko KOJIMA, Yoshihiko TACHI, Takanori HIRAI

小牧市民病院消化器科

Gastroenterology, Komaki City Hospital

キーワード :

【導入】
肝硬変症は組織学的に改築された小結節を有し線維性の隔壁を有する病態と定義され臨床的には肝疾患のEnd stageと認識されているが,その臨床病態は代償性肝硬変から非代償性肝硬変まで広域にわたる.METAVIRなどのstaging systemでは肝硬変患者はF4という単一のカテゴリーに分類され肝硬変症の範囲内での線維化の程度は評価不能である.今後多数のHCV陽性肝硬変患者がSVR後に線維化が改善することが期待される.それ故肝硬変症の病態に応じたsub-classificationが必要である.METAVIRの分類をmodifyしたLaennec fibrosis staging system(LFS)の有用性が報告されている(Kim MY,et al,J Hepatol 2011)が,肝硬変症例への肝生検の施行は合併症のリスクが高い.Virtual Touch Quantification(VTQ)による肝硬度測定は線維化ステージと極めて強く関連することは多数報告されている.我々は肝生検により肝硬変F4と診断された患者において,LFSによるstagingとVTQによる肝硬度との関連性について解析を行った.
【方法】
当施設においてVTQと肝生検が施行された慢性肝疾患481例(男/女228/253,年齢66.7±11.2,HCV/HBV/自己免疫性肝炎/NASH/PBC =368/47/30/25/11)を対象とした.VTQはSIEMENS ACUSON S2000を利用し10回の中央値をVs値(m/s)として採用した.1)肝生検による線維化ステージとVs値との相関を検討しROC曲線を用いて診断能を検討した.2)組織学的にF4と診断された111例(男/女52/60,年齢69.0±9.2)において,LFSに従いseptaの厚みによって,F4a(mild;250μm以下),F4b(moderate:250~500μm),F4c(severe;500μm以上)と細層別化したうえで,各線維化ステージとVs値との相関を検討しROC曲線を用いてFIB4index,APRIと各線維化診断能を比較した.3)各線維化stageの発癌率を検討しVs値により発癌予測が可能か検討した.
【結果】
1)肝生検の結果は,F0/F1/F2/F3/F4=39/179/87/65/111であった.線維化ステージとVs値は正の相関を示しており(p<0.001),F0 1.04±0.18,F1 1.22±0.40,F2 1.45±0.44,F3 1.74±0.74,F4 2.20±0.65であった.ROC曲線を用いてVs値のcut off値を設定すると,cut off値/AUROC/感度/特異度は,F1以上1.235/0.816/0.653/0.872,F2以上1.485/0.841/0.672/0.904,F3以上1.505/0.867/0.811/0.833,F4以上1.625/0.887/0.829/0.837であり,いずれの線維化ステージにおいてもAUROC 0.8以上と良好な診断能を示していた.2)F4症例はLFSにより細層別化すると,F4a/F4b/F4c=41/34/36であった.各stageにおけるVs値は,F4a 2.00±0.69,F4b 2.17±0.56,F4c 2.45±0.62であり,LFSとともに有意なVs値の上昇を認めた(p<0.001).ROC曲線を用いてVs値のcut off値を設定すると,それぞれのcut off値/AUROC/感度/特異度はF4b 1.665/0.668/0.913/0.500,F4c 1.845/0.672/0.861/0.493であり,FIB4index,APRIと各線維化診断能を比較すると,VTQ/Fib4/APRIにおけるそれぞれのAUROCは,F4b 0.668/0.582/0.625,F4c 0.672/0.541/0.591といずれの線維化ステージにおいてもVTQが最も良好な診断能を有するといえた.3)経過観察中に発癌した症例を計32例に認めた.F0/F1/F2/F3/F4a/F4b/F4c 0(0)/5(2.8)/4(4.6)/7(10.8)/5(12.2)/4(11.8)/7(19.4)の内訳であり線維化が進むにつれ発癌率が高くF4cからは約20%が発癌していた.
【考案】
VTQは肝硬変の細層別化の予測に有用でありF4cのcut off値1.84は発癌予測に有用である可能性が示唆された.
【結語】
VTQは肝硬変をLaennec fibrosis staging systemにてsub-classificationしたstageを予測可能であることが明らかになった.