Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

奨励賞演題 奨励賞
循環器 奨励賞

(S434)

慢性血栓塞栓性肺高血圧における運動耐容能と右室ストレインの関連について

Significance of RV Strain for the Assessment of Exercise Capacity after BPA in Patients with CTEPH

繼 敏光, 村田 光繁, 川上 崇史, 三田村 秀雄, 福田 恵一

Toshimitsu TSUGU, Mitsushige MURATA, Takashi KAWAKAMI, Hideo MITAMURA, Keiichi FUKUDA

1慶應義塾大学医学部循環器内科, 2国家公務員共済組合連合会立川病院循環器内科, 3慶應義塾大学医学部臨床検査医学

1Department of Cardilogy, Keio University School of Medicine, 2Department of Cardiology, Keio UFederation of National Public Service Personal Mutual Aid Associations Tachikawa Hospitalniversity School of Medicine, 3Department of Laboratory Medicine, Keio University School of Medicine

キーワード :

【背景】
慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)は予後不良な疾患であるが,近年バルーン肺動脈形成術(BPA)を含めた治療法の発展により,低侵襲で良好な成績が報告されており本邦を中心に普及している.一方で,BPAにより血行動態は著明に改善するものの,運動耐容能が改善せず心不全症状が残存する症例があるがその機序は不明である.我々は,BPA後の運動耐容能改善には右心機能が関与していると考え本研究を行った.
【目的】
心エコー図を用いてBPA後の運動耐容能における右心機能の意義を明らかにすることである.
【方法】
2012年11月から2016年12月までの期間に当院でCTEPHに対してBPAを施行し,術前後に心エコー図検査を施行した68症例を対象とした.Vivid-E9(GE Healthcare社製)で心エコー図を施行し,一般的な右室測定項目に加えて,EchoPAC解析装置で3D右室容量,右室長軸方向ストレインを計測した.また運動耐容能の指標として6分間歩行距離(6MWD)を行った.
【結果】
BPA施行後,右心カテーテル検査(RHC)指標,心エコー図右室測定項目は改善し,BPA6ヶ月後も改善を維持していた.
全68症例のうち,53症例(78%)が術後6ヶ月にRHCで肺血管抵抗(PVR)が正常化(<240 dyne ・ sec ・ cm-5)した.この53症例において,術後6か月後の右室自由壁長軸方向ストレイン(RVFS_6M)は有意に6MWDと逆相関を示した(r = 0.33,p = 0.02).結果,術後右室収縮機能は運動耐容能と関連する指標として重要であることが示唆された.そこで,術前指標とRVFS_6Mとの相関を検討した.3D-TTEで測定した3D-RVEF(r = 0.35,p = 0.01)および術前RVFS(RVFS_pre)(r = 0.43,p = 0.001)が相関していた.
次に,RVFS_6Mの正常化を術前指標で予測可能かROC解析を行った.結果,RVFS_preのカットオフ値を-15.9%にするとAUCは0.71,感度93.8%,特異度54.0%でRVFS_6M正常化を予測可能であった(p = 0.02).その他,術前の3D含む心エコー右心機能指標やRHC指標の中で,RVFS_preは最も強力なRVFS_6Mの正常化予測因子であった.
【考察】
RVFS_6Mが術後運動耐容能と相関したことから,術後の右室機能改善が臨床的にも有用であると考えられた.さらに,RVFS_preがPVR正常化下でのRVFS_6M低下の予測因子であった.肺高血圧症における右心機能は,一般に右室負荷による影響が大きいと考えられている.本研究では術前に高度な右室収縮障害を認めた症例では,術後右心負荷が改善しても右室機能が正常化せず心不全症状が残存したことから,右室心筋障害が術後の右心機能と関連している可能性が示唆された.
【結語】
右室自由壁ストレインは慢性肺血栓塞栓性肺高血圧症におけるバルーン肺動脈拡張術後の運動耐容能予測に有用であった.