岩﨑 亮祐, 高木 亮, 吉澤 晋, 梅村 晋一郎

Ryosuke IWASAKI, Ryo TAKAGI, Shin YOSHIZAWA, Shin-Ichiro UMEMURA

¹東北大学大学院医工学研究科, ²東北大学大学院工学研究科

¹Department of Biomedical Engineering, Tohoku University, ²Department of Communications Engineering, Tohoku University

キーワード :

【背景・目的】
強力集束超音波（HIFU）による加熱凝固治療では，超音波の負圧により生じさせた音響キャビテーション気泡が過熱作用を増強することが知られている．しかし生体内において，超音波伝搬経路の減衰率・音速の違いや，治療時のキャビテーション気泡の影響により，治療用超音波の吸収領域が変動し，集束超音波の幾何学的焦点領域（治療予測領域）と実際の治療領域がずれることが知られている．安全性と治療効果を高めるためには吸収領域を事前に可視化し，実際の凝固形成領域を予測することが求められる．昨年度の本会では，キャビテーションが生じない条件での吸収領域の事前可視化について報告したが，本研究ではキャビテーション援用加熱時において加熱増強効果を考慮した超音波吸収領域の高精度な可視化手法について検討を行った．
【方法】
組織の一様性を仮定し，超音波減衰により働く音響放射力によって生じた変位分布によって超音波吸収領域の事前可視化を行った．治療用HIFUトランスデューサより60 kW/cm2，0.1 msの気泡生成用パルスと3 kW/cm2，1.9 msのバースト波を照射し，対象に変位を生じさせた．導入した変位は剪弾波として周囲に広がるため，時間経過と共に予測精度が悪化する．そこでHIFUのイメージングパルスへの干渉を避けるための休止時間を0.6 ms設けた後，5 kfpsの高速イメージングで取得したエコー信号の位相シフトから算出される変位分布を用いて，時間領域における外挿処理を施すことによりHIFUパルス照射中の変位分布を推定した．用いたHIFUの周波数は1.25 MHz，対象試料は脱気したトリ胸肉とした．
【結果・考察】
図は時間領域での外挿により推定される，可視化パルス照射開始から2 ms後の変位分布と，気泡生成パルスと加熱用HIFUをPRF 20 Hzで6 s繰り返し生じさせた組織凝固の肉眼スライス像である．上側のサンプルには気泡生成パルスとバースト波の焦点を同一位置に設定して焦点領域可視化，超音波加熱を行った場合，下側のサンプルには気泡生成パルスの集束点を7 mm深い位置に設定した場合の結果を示している．気泡生成パルスの照射位置によって組織凝固の生じる位置が変動しており，可視化結果に追従した組織凝固が得られた．