Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

奨励賞演題 奨励賞
基礎 奨励賞

(S432)

高周波超音波を用いた散乱体構造推定手法の高精度化

Accuracy improvement of scatterer structure estimation method using high frequency ultrasound

田村 和輝, 吉田 憲司, 蜂屋 弘之, 山口 匡

Kazuki TAMURA, Kenji YOSHIDA, Hiroyuki HACHIYA, Tadashi YAMAGUCHI

1千葉大学大学院工学研究科, 2千葉大学フロンティア医工学センター, 3東京工業大学工学院

1Graduate School of Engineering, Chiba University, 2Center for Frontier Medical Engineering, Chiba University, 3School of Engineering, Tokyo Institute of Technology

キーワード :

【はじめに】
これまでに,3.5から6 MHzで取得される肝エコー信号から散乱体構造を推定し,肝線維症の進行度推定を可能としてきた.近年では,主に浅部用途として高周波プローブを用いた高分解能計測が可能であるが,これを深部に適用することで診断精度が向上すると考えられる.そこで本報告では,線維化進行度の異なる摘出ラット肝臓を対象とし,高周波超音波で収集したエコー信号に対する散乱体構造推定法の有用性について検討した.
【検討方法】
ラットの腹腔に四塩化炭素を注射し線維化肝臓モデルを作成した.肝臓を摘出後に脱気水中に固定し,中心周波数5 MHz, 15 MHz, 25 MHzの単一凹面振動子を用いて二次元のリニアスキャンを行い,三次元のエコー信号を収集した.5 MHzの振動子は一般的な腹部用プローブを模擬し,15 MHzと25 MHz振動子は高周波プローブを模擬した.これまでに臨床データにおける線維化進行度推定で有用性が確認されている,仲上分布モデルと2成分レイリーモデルを適用し,散乱体構造を推定した.仲上分布モデルは主に散乱体数密度を,2成分レイリーモデルは2種類の散乱媒質の混合比を推定する手法である.特に2成分レイリーモデルでは,線維症の肝臓が肝実質と線維組織で構成されていると仮定して,線維組織の割合を定量評価した.
【結果と考察】
各試料の線維化進行度は,病理医により新犬山分類を基準としてF0(正常,3個体),F2(軽度線維化,3個体),F3(重度線維化,4個体)の3つの進行度に分類されている.図は進行度毎のパラメータ推定結果の平均値と標準偏差を示し,縦軸は仲上パラメータ,横軸は2成分レイリーモデルを用いて推定した線維化割合を示す.線維化の進行に伴って仲上パラメータが低値となり,2成分モデルで推定される線維組織の割合が増加することが確認できる.3つの周波数のうち15 MHzの結果が最も顕著に変化しているが,これは波長と散乱体サイズの関係性を考えると100μm程度の線維組織が主な散乱源として推定されていることを示しており,病理所見と一致する.より高周波である25 MHzでは,肝実質内部の微小構造からの散乱に強く反応していることが想定されることもあり,臨床においても15 MHz程度の周波数を利用することが有効であると考える.
【謝辞】
本研究の一部はJSPS科研費15H03030,15H01107の助成を受けた.