Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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cover

2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 救急POC
ワークショップ 救急POC 急性期診療におけるPoint-of-Care Ultrasound -エビデンスに基づいた新しい活用法-

(S422)

病院前救急・災害時の超音波の活用

Utilization of ultrasound in prehospital and disaster medicine

児玉 貴光

Takamitsu KODAMA

愛知医科大学災害医療研究センター

Center for Disaster Medical Sciences, Aichi Medical University

キーワード :

超音波診断装置は,迅速性・安全性・機動性・再現性・経済性において優れた利点を多く有しており,医療機器として高い有用性が見直されてきている.特に救急医療領域において再評価がなされるようになってきており,走査方法や系統的アプローチとその教育方法が確立されるようになった.今日では機器の携帯性・耐久性が向上することで病院外での利用が模索されるようになり,病院前救急診療における重症患者や大規模災害における多数傷病者をスクリーニングする手段としての有効性の報告が増加している.米国では病院前救急診療においてパラメディックが超音波診断装置を駆使して,診療の質を高める試みが行われている.テキサス州ではパラメディックの活動プロトコルに超音波診断を入れようとしている地域もあり,生命危機のある傷病者をより早く治療できる体制を構築しつつある.2014年からは外傷患者に対して病院搬送前に超音波診断を行い,その結果を搬送先医療機関に伝送することで院内における無駄な画像検査をスキップすること,迅速な手術室搬入による確定的治療までの時間短縮を図る臨床試験が開始されている.一方,1998年12月に発生したアルメニア地震においてトリアージポストで400人に対して530スキャンを実施したことが災害時における超音波の活用に関する初めて報告とされている.この時は観血的手術を実施するかどうかの判断基準として検査を行ったのだが,1999年8月に発生したイズミット地震においてはクラッシュ症候群の患者に対して腎障害からの回復を予測するために用いられたことが知られている.実際に災害現場に持ち込まれてスキャンが実施されたのは,2005年6月に発生したグアテマラの土砂災害の現場とされており,この際に99人に対して137スキャンが行われている.Disaster Medical Assistance Team(DMAT)が超音波を携行して活用した事例は,2007年3月に発生した西オーストラリアのサイクロン被害後の停電状態で被災地外に患者を検査して搬送したことが端緒となった.以降,スマトラ島沖地震・四川地震・ハイチ地震などでも超音波診断による有効性が多く報告されており,今後は災害現場からトリアージポストに至るまでさまざまな局面で活用が進むことが期待されている.このような病院前救急・災害時の超音波の活用事例について解説をする.