英文誌(2004-)
特別プログラム 運動器
パネルディスカッション 運動器 超音波ガイド下生理食塩水注射が果たす臨床的意義
(S410)
頚肩部痛に対する超音波ガイド下fasciaリリース注射
Ultrasound Guided Fascia Release Injections for Neck and Shoulder Pain
笹原 潤
Jun SASAHARA
帝京大学スポーツ医科学センター
Institute of Sports Science and Medicine, Teikyo University
キーワード :
肩こりは,日本人における健康上の愁訴の中で,腰痛についで頻度が高い.肩こりの主な原因は,僧帽筋や肩甲挙筋,胸鎖乳突筋,菱形筋などの筋の拘縮であると考えられており,症状が悪化すれば頚肩部痛をきたす.頚肩部痛の鑑別診断としては,先述した筋の筋膜性疼痛のほか,肩関節周囲炎や頚椎椎間関節症,椎間板ヘルニアなど多岐にわたり,責任病巣が複数あることも珍しくない.
整形外科における頚肩部痛に対する一般的な診療アルゴリズムは,まず問診や身体所見をとった後に単純X線検査を行い,骨折等重篤な疾患を除外する.上肢に感覚障害や疼痛など神経学的異常所見があれば,MRIなど追加精査を検討する.治療としては,消炎鎮痛剤の内服薬や外用剤投与,理学療法,物理療法が一般的に行われ,改善が乏しい時や症状が強い時に注射治療が検討される.注射治療としては,トリガーポイント注射が一般的に行われており,そのほか症状や障害部位に応じて選択的頚椎神経根ブロックや頚椎椎間関節ブロック,星状神経節ブロック,肩峰下滑液包注射,肩関節内注射など検討する.このほかの注射治療として,生理食塩水を用いた超音波ガイド下fasciaリリース注射が最近注目を集めている.この注射は,疼痛の原因となっているfasciaへ超音波ガイド下に薬液を注入して除痛を図る治療法で,注射薬液は生理食塩水でも効果があると報告されている.この注射の出現により,頚肩部痛に対する診療アルゴリズムが今変わりつつある.
本発表では,超音波ガイド下fasciaリリース注射を軸とした,頚肩部痛に対する新しい診療アルゴリズムについて紹介する.