Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 運動器
シンポジウム 運動器 救急医療に役立てる運動器エコー

(S407)

判断に迷う小児肘外傷の対応-超音波診療の有用性-

Ultrasonographic evaluation of the elbow injury in children

宮武 和馬

Kazuma MIYATAKE

横浜市立大学運動器病態学教室

Department of Orthopaedic Surgery, Yokohama City University

キーワード :

日常診療において,小児の肘外傷に遭遇する頻度は高い.乳幼児であると肘内障が圧倒的に多い.明らかに手を引っ張ったというエピソードと,その後から手を動かさないという問診で診断は容易である.また,転倒したという病歴と,肘の腫脹があれば骨折の診断も比較的簡単につきやすい.
しかし,小児の場合は受傷起点が曖昧なことが多く,強い痛みから身体所見もとりにくい.そのため,多くの医師は「まずレントゲン」を行うことがゴールドスタンダードである.明らかな骨折であれば対応可能であるが,厄介なことに軟骨成分が多い小児の診断は難渋することもある.また,肘内障の治療難渋例も時に存在する.明らかな整復感が得られないことや,整復感を得られても強い痛みを訴える例も存在する.そのため,本当に肘内障であるのか,外上顆骨折ではないのか迷う事もある.
超音波装置は即座にこれらの鑑別が可能である.前肘窩,あるいは肘頭窩にプローベを当て,血腫,水腫の有無を確認する.関節液の性状はエコー輝度からある程度予想できる.新鮮な関節内骨折の場合は明らかな血腫が関節内に確認できる.肘内障では基本的には水腫は観察できない.ただ肘内障,骨折の経過が長い場合は水腫が見えることもある.どちらにしても関節液の性状が重要である.
また,肘内障については輪状靱帯の嵌頓(J sign)が前方操作で捉えることができるため,診断は容易である.また整復感が得られても疼痛を認めるケースは回外筋が腫脹していることがあり,超音波での確認で安心して帰宅させられる.
このようなことから,小児の肘外傷への対応は「まず超音波」であるべきであると考える.
具体的には,伸展位で来院した場合は前方走査,屈曲位で来院した場合(既に保健室などで三角巾がついている)は後方走査で血腫,水腫の有無をまず確認する.乳幼児の場合はそのまま前方走査でJ signの有無を確認する.明らかに関節内に血腫を認める場合はレントゲンを施行する必要があると考える.
また,稀ではあるが軟骨損傷などレントゲン・CTでは異常所見がうつらない症例も存在する.そのような場合も,まず関節内の血腫が確認できる.受傷起点に応じて丁寧に診察することで,レントゲンでうつらない軟骨損傷も捉えることができる.
小児肘外傷にはまず超音波診療を行うべきであると考える.