Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 血管
ワークショップ 血管 血管エコー標準化の実際と課題

(S402)

下肢静脈超音波検査とDVT予防

Lower extremity venous ultrasound and DVT prevention

佐藤 洋, 石井 克尚, 中村 武史

Hiroshi SATO, Katsuhisa ISHII, Takeshi NAKAMURA

1関西電力病院臨床検査部, 2関西電力病院循環器内科, 3関西電力病院消化器内科

1Department of Clinical Central Laboratory, Kansai Electric Power Hospital, 2Department of Cardiovascular Medicine, Kansai Electric Power Hospital, 3Department of Gastroenterology and Hepatology, Kansai Electric Power Hospital

キーワード :

【序言】
下肢静脈の超音波検査(ultrasonography:US)の標準的評価法は,日本超音波医学会が2008年に「下肢深部静脈血栓症の標準的超音波診断法」として発表された.その後2014年より静脈エコー検討小委員会が発足し,2017年中には,ガイドライン案(以下 新ガイドライン案)が発表される予定(2017年2月現在)である.下肢深部静脈血栓症(Deep vein thrombosis:DVT)は,致死的疾患となりうる肺血栓塞栓症の原因疾患であるので臨床上重要な疾患で,院内発症するリスクがある疾患でもあるので,医療安全対策として重要で,特定の診療科ではなくDVT予防や早期診断は,全病院的に取り組む必要がある.
【下肢静脈血栓症評価の実際】
新ガイドライン案では,検査対象はWells DVTスコアのような臨床診断スコアによるDVTリスク評価(低リスク,中リスク,高リスク)を行い,各リスク群に合わせた検査方法を選択することを推奨している.検査方法としては,新ガイドライン案では,簡易的なProximal USと下肢全体を観察するWhole leg USに大別さる.検査法の実際としては,圧迫法が特に重要視されている.検査体位は,仰臥位を基本とする.評価の基本は,血栓の有無,血栓の範囲,急性血栓か陳旧性血栓かの判断,血栓中枢端の浮遊性の評価である.また新ガイドライン案では,下肢静脈瘤評価についても記載した.
【当院の下肢静脈USの実施状況】
下肢静脈US検査数は,2012年度383件,2013年度413件,2014年度583件,2015年661例,2016年769例と年々増加している.
検査内容は,状況に応じて,Proximal US+下腿評価(検査時間5分程度),もしくは,Whole leg US(15-20分)を実施している.検査担当者は,5名の超音波検査士が担当している.DVT有無評価では.圧迫法を重視している.カラードプラ法は必ずしも全例に対して実施していない.腸骨静脈観察は,下肢腫脹や下肢DVT陽性,もしくは腹部腫瘤例を除いては観察していない.
【当院でのDVT予防の取り組み】
医療の質向上の取り組みとして,2016年度よりDVT委員会を設立した.DVTリスク評価として,全診療科入院患者を対象としてWells DVTスコア評価を行い,DVT高リスク群に対してはDVT評価目的の下肢静脈USを実施している.手術後DVT発生頻度は,2016年4月から2017年1月の期間で,総手術数3.680例中4例(0.11%)であった.また手術と関連性のないDVT発生率(来院時DVT発見例含む)は全入院患者数113.632例中46例(0.04%)であった.以前よりDVT予防策を講じていることが,DVT発症例数が少ない結果となっていると考えられる.
【今後の検討課題】
①下肢静脈USを実施するにあたり,下肢浮腫症例に対して,DVT陰性例に対して,浮腫原因特定のためのUS評価が臨床上は求められるが,新ガイドライン案では言及していない.②上大静脈症候群や上肢静脈や頸静脈の血栓評価については言及していない.
【結語】
新しい静脈USのガイドラインが公示され,全国に普及することを望む.