Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 血管
ワークショップ 血管 血管エコー標準化の実際と課題

(S402)

下肢静脈

Deep venous thrombosis of lower extremities

赤坂 和美

Kazumi AKASAKA

旭川医科大学病院臨床検査・輸血部

Medical Laboratory and Blood Center, Asahikawa Medical University Hospital

キーワード :

当院における下肢深部静脈血栓症(DVT)の検索のための超音波検査は,探触子は骨盤部では3.75~5.0 MHzのコンベックス型を用い,必要時にセクタ型を,大腿・膝窩・下腿部では7.5~10 MHzのリニア型,または3.75~5.0 MHzのコンベックス型を使用している.カラードプラ法のvelocity rangeは7~10 cm/sで設定し,適宜パワードプラ法を用いている.体位は通常骨盤・大腿部で仰臥位,膝窩・下腿部では腹臥位で行っている.ストレッチャーやベッドサイドで施行する場合は,膝窩・下腿部も仰臥位のまま下肢を外旋させて行うが,肢位保持が困難な患者も多く,可能な場合には1名が介助するようにしている.画面表示は標準的超音波診断法の通りである.
下肢DVTの検索は中枢端の同定と浮遊性の評価を優先させつつ,部位診断・性状診断・血流診断を行うようにしており,手順は概ね標準的超音波診断法に示されている通りである.しかしながら,検査時間を十分確保できないことから,評価項目の一部は割愛している.骨盤部では短軸像と長軸像で描出し,適宜呼吸負荷法を行いつつ壁と内腔を観察する.一方,大腿・膝窩・下腿部ではまず短軸像で形態と拡張の有無,静脈圧迫法での静脈の圧縮状態を評価しており,長軸像での観察は血栓の可能性を疑う場合や血栓を認める場合に必須とし,短軸像で全く問題ない場合は省略している.危険因子を有さない下腿のみの浮腫を認める患者においては,大腿部に血栓を認めないならば,腹圧をかけての静脈血流の変化を評価するのみで骨盤部の検索は省略している.また,塞栓症を誘発しないことは必須と考え,ミルキングは器質化血栓では行うが,血栓の存在が疑われる場合には行っていない.
探触子と骨で静脈を圧迫するようにし,カラードプラやパワードプラも併用するなど,静脈の圧迫不十分による誤認を避けるように留意しているが,描出不良で圧迫しにくい患者での評価は難しい.また,亜急性期と思われる血栓の形成された時期や溶解の可能性について,診療医より質問を受けることもあるが判断は難しい.当院では肺塞栓チームや血管外科医がDVT診療に対応しているが,個人的には入院患者において超音波による血栓症の検索と評価をより組織的に行いたいと考えている.そのためには対象となる患者の層別化と,DVTを認めた際の初期対応について,院内での取決めが必要であると感じている.