Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 血管
ワークショップ 血管 血管エコー標準化の実際と課題

(S400)

腎動脈ドプラ検査における現状と課題

Problems of renal artery doppler ultrasonography

三木 俊

Takashi MIKI

東北大学病院生理検査センター

Department of Clinical Physiology Center, Tohoku University hospital

キーワード :

【はじめに】
腎動脈エコーは狭窄・拡張病変と腎機能を評価する検査である.粥状動脈硬化性腎動脈狭窄症に伴う腎血管性高血圧症は進行性で腎萎縮を呈し,糖尿病性腎症など他の高血圧疾患と鑑別されないまま放置されている場合が多い.特に腎血管性高血圧症を疑う臨床所見を有する場合は,スクリーニング検査として積極的に腎動脈エコーを施行することが重要である.
【現状】
腎動脈の診断は腎動脈起始部の収縮期最高血流速度(PSV:peak systolic velocity)が,180cm/sec以上かつRAR(RAR : renal/aorta ratio)が3.5以上の場合,60%以上の狭窄が疑われる.若年者の高血圧では,線維筋性異型成(FMD)を疑い,腎動脈の中部から遠位部に狭窄・拡張の有無を観察する.実際の検査では,上記以外にも腎臓の形態を観察し,腎内の機能的評価として血流測定も行う.2015年日本超音波医学会用語・診断基準委員会から「超音波による腎動脈病変の標準的評価法」がリリースされ,腎動脈エコーは多くの施設で施行されているが,狭窄の見落しや他のモダリティの乖離など問題点も多い.
【課題】
腎動脈エコーの評価項目の多くはドプラ検査である.腎動脈起始部PSV評価とRARの評価では少しのドプラアングルの違いや走査法によって過大・過小評価する場合もある.腎動脈起始部PSV評価のドプラアングルは最小限にすることやRAR評価にて腎動脈起始部PSVと腹部大動脈PSV測定の際にはドプラアングルを合わせて評価するなど工夫が必要である.腎動脈エコーの信頼性は感度84-98%・特異度62-99%と報告によってさまざまであるが,適正な技術を身につけることで正確な測定が可能となる.
【まとめ】
腎動脈狭窄症が高血圧の発症に関与しているかの判定は難しい.実際,腎実質性障害(腎硬化症,萎縮性腎症,慢性腎症,糖尿病性腎症)を伴う場合,腎動脈狭窄症を改善しても降圧効果が得られない症例もある.現在では高度狭窄が存在していても経過や病態等を考慮して慎重に経皮的腎動脈形成術(PTRA : percutaneous transluminal renal angioplasty)を実施している施設が多い.これらの現状と課題についてディスカッションしたい.