Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 血管
シンポジウム 血管2 臨床医に聞く治療の実際とUSの役割

(S398)

下腿浮腫の診断における超音波検査の役割

The benefit from USG as a diagnostic tool for lower limb edema

松原 忍

Shinobu MATSUBARA

東京医科大学病院心臓血管外科

Cardiovascular surgery, Tokyo medical university hospital

キーワード :

【はじめに】
下腿浮腫は様々な要因で起こる.腎機能障害や甲状腺機能異常などに起因する場合は,血液検査データにて原因が判明しやすい.しかし,多くは心エコーや造影CTなどの画像検査による評価を要し,除外診断を経て確定診断に至る.今回は下肢浮腫をきたす様々な疾患を診断するために有意義だった超音波検査所見を供覧する.
【症例1】
83歳,女性.半年前から両下肢浮腫が出現し増悪傾向.近医で両側大伏在静脈の逆流を指摘され,手術依頼にて当科受診.初診時,体動時喘鳴が著明であり胸部X線検査で心拡大を認めたため,心エコー施行.EFは保たれていたが,重度の三尖弁閉鎖不全を認め,右心不全による下肢浮腫と判断した.利尿剤投与による心不全の治療を開始.
【症例2】
86歳,女性.1年前からの両下肢浮腫にて受診.淡褐色色素沈着と皮膚の硬化を両側下腿前面に広く認め,両側鼠径リンパ節が数個ずつ触知された.スクリーニングの腹部CT検査にて,多発肝嚢胞を指摘された.腹部エコー検査で大きな肝嚢胞の一つが下大静脈を圧排し,血流に影響していることが確認され,下肢静脈不全の主因と判断した.弾性ストッキングによる圧迫療法を開始.
【症例3】
70歳,女性.1ヶ月前からの右下肢浮腫にて受診.3年前より右変形性膝関節症のため定期的に整形外科で治療を受けている.左下腿に静脈瘤を有するので,右下肢も血管エコーを施行.大伏在静脈の逆流とベーカー嚢胞を認めた.右下腿の筋力低下による廃用性浮腫と静脈逆流に起因する浮腫と判断した.弾性ストッキングによる圧迫療法と,筋ポンプ改善の運動療法を開始.
【症例4】
22歳,女性.3年前より左下腿の浮腫を自覚.他疾患で入院時に指摘され,当科受診.腹部手術歴はなく,左下肢の炎症の既往もなく,病歴からは原発性リンパ浮腫が疑われた.血管エコーで静脈不全がないことおよび左下腿の皮膚の変化を認め,同疾患と判断.複合的治療を開始した.
【まとめ】
超音波検査は低侵襲な検査方法である.また,画像処理の進歩に伴って鮮明な病変の存在が診断され,血流などの微細な動きをとらえての質的診断も可能となってきている.同機器を用いて病態を客観的に可視化,数値化することは,迅速かつ正確な診断の一助となり,非常に有用な検査である.