Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 血管
シンポジウム 血管2 臨床医に聞く治療の実際とUSの役割

(S396)

血管内治療First時代における大動脈,腎動脈疾患の超音波検査

Ultrasonographic evaluation of aortic and renal arterial diseases

市橋 成夫, 平井 都始子, 岩越 真一, 吉川 公彦

Shigeo ICHIHASHI, Toshiko HIRAI, Shinichi IWAKOSHI, Kimihiko KICHIKAWA

1奈良県立医科大学放射線科・IVRセンター, 2奈良県立医科大学附属病院総合画像診断センター

1Radiology, Nara Medical University, 2Diagnostic Imaging Center, Nara Medical University

キーワード :

高齢化社会の到来に伴い,大動脈及び腎動脈など様々な疾患において血管内治療が第一選択となっている.大動脈瘤や大動脈解離ではステントグラフトを留置することで,大動脈瘤内や大動脈解離の偽腔内への血流を遮断し,これらを血栓化に導き,増大や破裂を予防する.近年では大動脈瘤破裂などの緊急例に対しても積極的にステントグラフト治療が用いられている.術後評価として血流の瘤内への漏れであるエンドリークの評価が大切である.ステントグラフトの近位遠位端から瘤内への血流の漏れであるタイプIエンドリーク,大動脈分枝からの血液の逆流によるタイプIIエンドリーク,ステントグラフトを2本以上使用した場合の接合部から生じるタイプIIIエンドリーク,グラフトファブリックからの血流透過によるタイプIVエンドリークの4種類がある.術後のフォローアップに通常用いられる造影CTではエンドリークの存在診断は可能であるが,エンドリークの血流の方向を同定することが困難であり,上述の4種類のエンドリークの鑑別が不可能なことが多い.超音波検査は血流速度や方向など血行動態の評価が容易であるので,エンドリークの鑑別診断に非常に有用である.腎動脈疾患では腎動脈狭窄に対するステント留置,腎動脈瘤に対するコイル塞栓術などが血管内治療の対象となる.留置されたステント,コイルなどの金属アーチファクトにより,CTやMRIではステント開存や動脈瘤の残存血流の評価は困難であるが,超音波検査では明瞭に描出されることが多い.被曝やヨード造影剤使用を回避できる点,比較的安価な医療費から,欧米では超音波検査が大動脈ステントグラフト治療後など様々な血管内治療のフォローアップにおける第一選択とされることが多い.本邦では高額なCTやMRIがいつでも撮像できる環境にあり,また超音波検査には一定の評価者の技量が必要であることから,超音波検査が本来の役割を果たしきれていない.本学会がさらなる超音波検査者のクオリティコントロール,超音波検査の普及に寄与されることを切に望む.