Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 血管
シンポジウム 血管1 血管領域における比較的稀な所見・疾患・病態に遭遇した時,あなたはどう評価し,診断に結びつけますか?

(S394)

下肢静脈領域の稀な疾患に対するアプローチ

Approach to rare diseases of lower limb venous ultrasonography.

高井 洋次

Hiroji TAKAI

藤田保健衛生大学病院放射線部

Department of Radiology, Fujita Health University Hospital

キーワード :

【はじめに】
下肢静脈超音波検査は深部静脈血栓症(Deep Vein Thrombosis: DVT)と下肢静脈瘤の評価が主目的となる.
昨今,周術期の医療安全的な意味合いから術前後のDVT検査件数が激増し,日常業務の大半をこのスクリーニング検査が占めている.
一方,レーザー治療やRFAの登場により,より低侵襲で手術可能となった下肢静脈瘤の術前後の評価も増加傾向にある.
【目的】
下肢静脈超音波検査施行時に,稀な所見・疾患・病態に遭遇した時に抑えておくべきポイントを明らかにする.
【対象1】
稀な疾患として,Klippel-Trenaunay syndrome:KTSがあげられる.疾患の理解なく,検査でいきなり遭遇したら,何を検査していいかわからずに終わってしまうであろう.疾患の特徴を理解することで,評価のポイントが明らかになるはずである.
KTSは,①ポートワイン・ステイン(port wine stain:毛細血管奇形),②静脈・リンパ管の異常(静脈瘤を含む),③一肢の骨・軟部組織の肥大の三兆候を有する先天性静脈疾患である.①や③に関しては超音波で得られる所見は乏しい.②に関しては静脈瘤(弁不全による逆流)や深部静脈の形成不全,静脈の形成異常などについて確認していく.また,深部静脈の閉塞やDVTを伴うこともある.ただし,動静脈奇形を有する場合はParkes Weber症候群という別の疾患と考えられるので注意が必要である.
【対象2】
静脈瘤の検査を行っていると,大伏在型や側枝型ではない非典型の静脈瘤に遭遇する.大腿後面から外側にかけて非典型静脈瘤がみられる女性患者であれば積極的に骨盤内静脈鬱滞症候群(Pelvic congestion syndrome:PCS)を疑うべきであろう.卵巣静脈や骨盤内静脈不全により下肢静脈瘤が出現している状態である.現実的には原因は陰部~骨盤内にあるため,逆流原の特定に至らないこともあるが,側枝型でないことを確認するために伏在静脈大腿静脈接合部(sapheno-femoral junction:SFJ)での逆流確認をする.また,大腿背側に存在する不全穿通枝が影響していることもあるので確認する.また,やせ型体系であれば,ナットクラッカー現象が原因である可能性もあるので,左腎静脈の様子も確認しておくとよい.
【結論】
静脈疾患の多くは圧排や逆流による圧力の変化により生じていることが多い.異常所見を見つけた時にはどこにその原因があるかを確認・推測していくが,その理解のためには解剖や生理,疾患を理解しておく必要があると考える.