Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 血管
シンポジウム 血管1 血管領域における比較的稀な所見・疾患・病態に遭遇した時,あなたはどう評価し,診断に結びつけますか?

(S393)

知っておくと役に立つ下肢動脈疾患 ─症例から学ぶ─

Case presentations with interesting echo findings on lower limb artery disease

藤崎 純

Jun FUJISAKI

東邦大学医療センター大橋病院臨床生理機能検査部

Clinical Functional Physiology, Toho University Ohashi Medical Center

キーワード :

下肢動脈エコーの検査目的のほとんどは動脈硬化性病変である閉塞性動脈硬化症の有無を判別することで,それ以外の疾患は稀である.下肢動脈領域で稀な症例に遭遇した際の診断ポイントとしては,まず動脈硬化性病変との鑑別,病変部の形態,血管の走行などの詳細な観察が重要であり,また患者さんの話を聴く,足を診ることで得られる情報から診断に結びつくこともある.当院で経験した稀な症例を呈示する.
症例1:70歳代女性.主訴は右間歇性跛行.下肢動脈エコーでは右外腸骨動脈~総大腿動脈にかけて狭小化と拡張を繰り返す長い病変を認めた.最狭小部で血管径約1~2mm,拡張部はカラードプラ法で渦を巻く様にモザイクパターンを呈していた.
病変部,その他の部位に動脈硬化は乏しく明らかに粥状硬化性病変とは異なる.若いころから右足のみ間欠性跛行(疲れやすい,だるさ)があった.⇒右外腸骨動脈の線維筋性異形成(FMD)疑いと診断.
症例2:40歳代女性.主訴は頭痛.右結膜下出血にて近医眼科受診,高血圧を指摘され当院紹介受診.腎動脈エコーにて両側腎動脈本幹遠位部に乱流および高速血流を認めFMDが疑われた.ABIにて右0.89,左1.02と低下あり下肢動脈エコーが依頼.右外腸骨動脈起始部に乱流および高速血流が認められた.
病変部は断層像にて血管の不整像があり,他の部位に動脈硬化は乏しく病変部も明らかに粥状硬化性病変とは異なる.高校生のころから右足の間欠性跛行(疲れやすい,だるさ,違和感)あり,腎動脈の病変とも類似像⇒右外腸骨動脈のFMD疑いと診断.
症例3:80歳代男性.既往歴に末梢動脈疾患.脳神経外科にて頸動脈狭窄症に対する頸動脈ステント留置術(CAS)施行後,翌日より左下肢冷感,痺れ出現.下肢動脈エコーでは両下肢動脈には狭窄・閉塞性病変が散見されるが,左大腿動脈の狭窄部には球状で可動性を伴った等エコー病変があり,これに伴い乱流および高速血流を呈していた.
病変部は周囲の動脈硬化性病変とは異なるエコー像を呈しており,病変部の皮膚には広範囲に内出血があり,前日のCASを左大腿部からアプローチされていた.
⇒止血デバイスであるアンギオシールによる狭窄と診断.
稀な症例は一度見ておくと忘れない.成書や学会,勉強会などで目にしておくことも大切と考える.