Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 血管
シンポジウム 血管1 血管領域における比較的稀な所見・疾患・病態に遭遇した時,あなたはどう評価し,診断に結びつけますか?

(S392)

上腕動脈における高位分岐例について

Cases of high brachial artery bifurcation

小林 大樹, 末光 浩太郎

Hiroki KOBAYASHI, Kotaro SUEMITSU

1関西ろうさい病院中央検査部, 2関西ろうさい病院腎臓内科

1Central clinical laboratory, Kansai rosai hospital, 2Internal Medicine, Division of Kidney and Dialysis, Kansai rosai hospital

キーワード :

【はじめに】
上腕動脈は上腕部を走行する1本の基幹動脈であり,通常は2本の深部静脈と神経と伴走する.また,肘関節部より2横指末梢側で橈骨動脈と尺骨動脈に分岐するが,稀に腋窩付近またはその末梢側で分岐する高位分岐例がある.超音波検査施行時にこれらの症例に遭遇した場合の観察ポイントを述べる.
【症例】
68歳,女性,右手第Ⅰ-Ⅳ指に潰瘍が出現し当院受診となった.超音波検査では腋窩付近で橈骨動脈が分岐する上腕動脈高位分岐症例であった.橈骨動脈起始部から手関節部まで閉塞していたが,以降末梢側は開存していた.また,肘部の上腕動脈においては血流を認めたが,前腕部の尺骨動脈においては血流シグナルを認めなかった.前腕部の末梢側を走行する骨間動脈においては微弱ながら血流シグナルが得られた.血管内治療を施行することになり,腋窩付近の橈骨および上腕動脈の分岐部をエコーガイド下でマーキング後入室した.高位分岐のため,左鼠径部から中枢側にアプローチし,右鎖骨下動脈,右腋窩動脈へとガイドワイヤーおよびガイディングカテーテルを進めた.撮影した造影画像と体表面からのマーキング部より橈骨動脈起始部を同定し,広範囲の橈骨動脈閉塞部を手関節部まで通過,血管拡張用カテーテルに入れ替え,バルーン拡張し血流を再開通させた.右橈骨動脈の拍動が触知可能となったため手技を終了した.術前の超音波検査で橈骨動脈の起始部を同定したことが,血管内治療の手技において有用な情報になった.
【まとめ】
文献的に上腕動脈の高位分岐例は約5-14%との報告がある.まずは,上腕動脈の高位分岐の存在を知っておくことが重要である.超音波検査において上腕動脈を描出する際は,必ず短軸像から描出し拍動する動脈が1本か2本かを意識する必要がる.また,高位分岐例では中枢側ですでに分岐しているため,肘窩で橈骨動脈と尺骨動脈に分岐しないことが多い.このことは,高位分岐の存在を疑う契機にもなる.また,術前に高位分岐を診断しておくことで,血管造影検査を施行する際の動脈穿刺部位を,肘部か鼠径部かを確定することができる.高位分岐の存在が不明な状態で肘部の動脈から造影すると橈骨あるいは尺骨動脈の一方しか造影されず,他方は動脈閉塞と診断される可能性がある.同様に,シースの留置部位も決定することができるため,必要最小限のデバイスで効率良く治療手技を進めることができる.