Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 血管
シンポジウム 血管1 血管領域における比較的稀な所見・疾患・病態に遭遇した時,あなたはどう評価し,診断に結びつけますか?

(S392)

頭頸部血管における稀な疾患の超音波画像

Ultrasound images of rare diseases in the carotid artery

濱口 浩敏

Hirotoshi HAMAGUCHI

北播磨総合医療センター神経内科

Department of Neurology, Kita-harima Medical Center

キーワード :

はじめに:日常臨床の現場では,様々な疾患に遭遇しますが,時に比較的稀な症例を経験することがあります.今回,そのような症例に遭遇した時に,どのように評価し,診断に結びつけるか,頭頸部領域の疾患について解説します.
1.血管炎:頭頸部領域で見られる大型血管炎には,主に高安動脈炎と巨細胞性動脈炎が挙げられます.頭頸部エコーでの異常所見を契機に発見し,診断につながる場合が存在します.高安動脈炎における超音波所見としては,頸動脈の短軸像で見られるマカロニサインが特徴的で,巨細胞性動脈炎における超音波所見としては,浅側頭動脈の短軸像で見られるhypoechoic haloサインが特徴的です.他にも血管炎の特徴的所見として,内中膜複合体肥厚,拡張・蛇行,瘤形成,内腔の狭小化,縮窄・閉塞など多様な画像が認められます.さらには椎骨動脈に炎症が波及することも知られており,その際の典型像を知っておくことは重要です.
2.Carotidynia:突然発症の片側頸部痛を呈した際,総頸動脈遠位部から頸動脈分岐部にかけて血管周囲に低輝度の軟部組織を観察することで診断します.血管内腔が軽度狭小化することもあります.2週間以内に自然軽快することが多いため,エコーでの評価,血管炎との鑑別が重要です.
3.頸動脈仮性動脈瘤:大腿部での仮性動脈瘤はしばしば経験しますが,頸動脈領域にも稀ながら仮性動脈瘤を経験することがあります.大部分は外傷後に発生します.エコー画像としては頸動脈に隣接した瘤状構造物を確認し,ジェット血流の存在,to and fro波形の確認をします.これらは外科的治療を念頭において部位の確認をする必要があります.
4.内頸動脈無形成:発生学的に内頸動脈無形成を来した場合,エコー所見での評価は有用です.総頸動脈の左右差を確認した段階で疑う必要があります.内頸動脈無形成になると,頸動脈洞が不明瞭になり,総頸動脈から連続性に外頸動脈が出現します.高位分岐や内頸動脈閉塞と鑑別すること,椎骨動脈が側副路になることもあります.経頭蓋エコーを併用すると,側副路の評価が可能です.
5.稀な疾患ではないが,知っておきたい頸動脈エコー所見
1)頭蓋外椎骨動脈解離:椎骨動脈解離は,頸動脈解離と違い,外傷後や特発性に発生します.特徴的な画像として,C6横突起周囲に限局した血管拡張,壁内血腫,らせん状血流,偽腔の存在などが見られます.頸部痛やめまい症状を認めたときには知っておきたい病態の一つです.
2)Bow-hunter症候群:同じく頸部回旋でめまい症状が出現した場合に疑う病態ですが,典型的な画像はなかなか遭遇することは稀です.エコーを用いた診断としては,頸部回旋で椎骨動脈の拡張末期血流が0cm/sになることを観察します.症状が出現する可能性が高いですので,観察する際には複数で行うなど注意が必要です.
最後に:稀な疾患に遭遇した場合,焦ることもありますが,治療方針までを考慮した説得力のある画像を残すためには,ルーチン画像に加えて,動画を活用すること,所見のある部位だけでなく,周囲の情報が分かるような画像も残すようにしましょう.詳細かつ明瞭な画像を残すためには普段からの心がけが大事です.