Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 泌尿器科
シンポジウム 泌尿器科 前立腺癌治療の超音波ガイダンス

(S384)

Active surveillanceのための3次元超音波による追跡

Realtime 3D US for tracking of prostate cancer on Active Surveillance

浮村 理

Osamu UKIMURA

京都府立医科大学泌尿器科

Urology, Kyoto Prefectural Univ. of Medicine

キーワード :

日本の男性がん罹患率に関する2015年および2016年統計で前立腺がんは第1位となっている.前立腺がんの中には比較的ゆっくりと進行するがんも多く,新しく前立腺がんと診断されても,従来の侵襲的な治療を即時に施行する必要のない,つまり,未治療で経過をみることのできる場合も少なくない.そのような臨床的に即時治療の必要のない,いわゆるclinically insignificant cancerは,臨床の現場ではPSA,画像診断,針生検という経過観察の3手段を組み合わせることにより時間経過に応じた病勢の進行の有無を確認し,即時治療すべき状況になるか否かを監視する必要がある.
針生検は従来,2次元の超音波ガイド下に,いわゆる,無作為ランダム生検で施行されてきたが,その採取部位については空間的にどこであったのかを記録することは施行していなかったので,同じがんの部位の組織を将来,再度採取して,時間軸2点間で比較することは過去には不確実あるいは不可能であった.しかし,近年のIT-technologyの進歩に応じて,前立腺超音波ガイド下針生検技術にも革新が起きている.
本演題では,Real-time3次元超音波により前立腺針生検の3次元的な位置情報について,その採取した針の軌跡を空間座標で(x1,y1,z1)から(x2,y2,z2)への2点間であることをもってデジタル情報で記録しておき,将来に,再度,そのデジタル情報をもとに,既知のがん組織とほぼ同じ部位を採取して,時間軸で異なる2点間で,組織学的な病勢の進行の有無を比較することが信頼性をもって可能にする技術が現実に使用可能となっている.現行の無作為ランダム生検では,がんと判明している経過観察中のがん患者において,生検を再度施行した場合,がん陰性になることがしばしばあり,その結果についてがん患者が困惑したり,不信がられることさえもある.それと比較して,この新技術を用いれば,はるかに高いがん再確認率が得られており,しかも組織学的な病勢の進行,すなわち,がんの自然史を組織学的・分子遺伝子学的に検討することが可能と思われ,本技術の有用性のさらなる検討が期待される.