Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 泌尿器科
シンポジウム 泌尿器科 前立腺癌治療の超音波ガイダンス

(S383)

Focal therapyのためのMRI-超音波画像融合生検

MRI/ultrasound-fusion prostate biopsy for focal therapy of prostate cancer

齋藤 一隆

Kazutaka SAITO

東京医科歯科大学大学院腎泌尿器外科学

Department of Urology, Tokyo Medical and Dental University

キーワード :

【背景】
限局性前立腺癌治療において,前立腺全摘除,放射線照射などの根治療法は優れた制癌効果を示すものの排尿・性機能障害などの治療関連合併症を高率に伴う.癌を含む領域を選択的に治療する前立腺部分治療(focal therapy)は,癌病巣を治療しつつ機能温存を可能とする前立腺癌に対する新たな治療法とである.部分治療を施行においては,より正確な癌の質的・局在診断により,部分治療の適格症例の選択を行うことが重要である.前立腺癌の画像診断においてマルチパラメトリックMRI検査が有用であることより,MRI画像ガイド下の前立腺生検が,局在診断を含めたより正確な前立腺癌の診断に結び付くと期待されている.当教室においても,MRI画像ガイド下前立腺生検を行っており,そのfocal therapyへの有用性を検討する.また,当教室で行っている小線源刺入による前立腺部分治療の結果についても紹介する.
【方法】
現在,当教室では,多少の変遷を経て,系統生検として経直腸超音波画像(TRUS)ガイド経会陰18か所生検を初回標準生検法としている.生検前MRIにて前立腺癌を疑う病変を認める場合には,MRI陽性部位に対し,MRI-超音波融合,または仮想融合標的生検を4コア追加する.系統生検,またはMRI陽性部位への標的生検での,それぞれの癌の検出率,質的診断精度(グリソンスコア,最大癌長)を比較した.また,前立腺生検とMRI画像により,前立腺部分治療の適格例が選別できるか検討した.
【結果】
標的生検は18か所系統生検と比較し,グリソンスコア,および最大癌長の検出において,差を認めず,いわゆる臨床的に重要な癌の検出率においては,両生検法は同等であった.一方,標的生検では臨床的には重要でないとされる低グレード,低用量癌の検出が低くなる傾向が認められた.また,生検所見とMRI所見を組み合わせることで,治療対象領域を前立腺の2分の1から4分の1まで縮小できる症例を高い精度で選別できることが分かった.
【結論】
上記の結果を踏まえ,当教室では,約40例の限局性前立腺癌症例に対し,小線源療法を用いたfocal therapyを行い良好な治療結果を得ている.MRIガイド下前立腺生検は,正確な前立腺癌診断のみならず,新規治療法であるfocal therapyへも応用も可能とする.今後はMRI画像を用いたより精細な標的部位の設定も可能になると思われ,MRI-超音波画像融合生検の意義はさらに大きくなるものと考えられる.