Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 脳神経
パネルディスカッション 脳神経 脳血管障害に対する超音波診断の新機軸 Innovation of ultrasound diagnosis in cerebrovascular disease

(S377)

頸動脈狭窄に対する経頭蓋超音波による評価

Evaluation of carotid stenosis using transcranial Doppler ultrasonography

古井 英介, 堀 聡, 梅村 公子, 堀 恵美子, 柴田 孝, 岡本 宗司, 久保 道也, 堀江 幸男

Eisuke FURUI, Satoshi HORI, Kimiko UMEMURA, Emiko HORI, Takashi SHIBATA, Soushi OKAMOTO, Michiya KUBO, Yukio HORIE

1済生会富山病院脳卒中内科, 2済生会富山病院脳神経外科

1Department of Stroke Neurology, Saiseikai Toyama Hospital, 2Department of Neurosurgery, Saiseikai Toyama Hospital

キーワード :

頚部頚動脈狭窄は脳梗塞の原因として重要な病態である.人口の高齢化,生活習慣病の増加により,かつて日本人では少ないとされた頚部頚動脈狭窄は欧米人と比較しても少なくないことが報告されている.頚動脈狭窄の診断が重要なのは,頚動脈内膜剥離術(Carotid Endarterectomy: CEA)による脳梗塞予防効果が大規模臨床研究において証明されており,またCEAが施行困難な場合の代替として頚動脈ステント留置術(Carotid Artery Stenting: CAS)が存在するからである.CEAの適応は,脳梗塞あるいは一過性脳虚血発作(Transient Ischemic Attack: TIA)を起こしたことがある症候性狭窄かあるいは一度も起こしたことのない無症候性狭窄かと,主に血管造影上のNASCET法による狭窄度の2つの基準で判断されるのが一般的である.
経頭蓋超音波検査である経頭蓋ドプラ法(TCD)および経頭蓋カラードプラ法(TC-CFI)を用いることにより,頭蓋内血流をリアルタイムに観察できる.TC-CFIは,頚動脈エコーや心エコーと同じ汎用の超音波断層装置を用いて検査を行う.TC-CFIを用いて狭窄側の中大脳動脈(MCA)の血流速度をCEAの前後で測定することにより,CEA後の過灌流が予測出来ると報告されている.
TCDを行うには専用装置が必要で,プローブ固定装置を用いることで頭蓋内血流の長時間のモニタリングが可能となる.TCDにより頚動脈狭窄側のMCAから微小栓子を検出可能で,このシグナルはMES(microembolic signals),あるいはHITS(High Intensity Transient Signals)と略される(図).頚動脈狭窄におけるMESの意義として,存在すると脳梗塞の危険が高まること,無症候性に比較し症候性頚動脈狭窄で陽性頻度が高いこと,脳虚血発作直後ほど陽性頻度が高いこと,頚動脈狭窄度が強くまた潰瘍を伴うほど陽性頻度が高いことなどが知られている.無症候性頚動脈狭窄において不安定プラーク検出にMESを利用する研究もなされている.
また,TCDを用いて脳血管反応性を評価することも可能である.さらにCEAあるいはCAS中の術中モニタリングとしてTCDを応用することも出来る.CAS中にTCDを活用することで,確実なプロテクションを確認することができ,造影回数の減少や後拡張直後の過灌流の有無の判断も応用可能である.CAS中のモニタリングとしてTCDは,MESおよびMCAの血流速度変化を同時にリアルタイムに観察でき,血管撮影や透視のみからは得られない情報を得ることができる.