Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 脳神経
シンポジウム 脳神経 超音波による頸動脈病変の標準的評価法2016:経緯と臨床への応用 Standard method for ultrasound evaluation of carotid artery lesions 2016: Process and clinical application

(S372)

IMT評価

Assessment of Carotid Intimal-Media Thickness

石津 智子

Tomoko ISHIZU

筑波大学臨床検査医学

Department of Clinical Laboratory Medicine, University of Tsukuba

キーワード :

頸動脈内中膜厚(IMT)計測の世界的な標準化はようやく達成されようとしている.これまで我が国で推奨されてきた総頸動脈の3点の計測法は,今回の標準的評価法から削除された.代わりに,マンハイム合意で推奨されている世界標準法を紹介している.これは総頸動脈の球部との境界部から心臓側10mmまでの10mm長の範囲で,血管壁の探触子からは深部壁(Far wall)のIMTを計測するものである.境界部にIMTの膨隆がある場合はこの部分を避け,5mm程度心臓側のポイントから10mm長にわたり計測する.計測には自動トーレス機能が推奨される.特に精密な計測を要するときは再現性に留意する.心臓拡張期の時相,側方からの超音波入射に統一することなどを推奨する.
自動トレース機能は最新の高機能装置には搭載されているが,汎用機への普及は十分でない.このような現状を鑑み,一般的には使用されていないIMT-C10という指標も新しく提唱した.これは手動計測である従来の3点法を簡略化し,1点としたものである.さらに3点法とは異なり,部位は球部との境界部から心臓側10mmと決めこの部分にIMTの膨隆があっても計測することで,検者間のばらつきを少なくすることとした.IMT-C10は10mm長のトレース計測結果と近似したものとなると想定されることから,年齢別の基準値(10歳毎の年齢÷100+0.2mm)を判定の参考にできる.一方,新指標でありエビデンスの裏づけはないことは留意すべきである.
総頸動脈IMT平均値の計測意義は,プラークが認められないごく早期の動脈硬化症例の診断にある.すでにプラーク病変が認められる症例では,総頸動脈IMTの計測の臨床的役割は少ないと思われる一方で,若年者の動脈硬化性疾患1次予防での活用には有用かもしれない.現在,IMTをどのように臨床活用すると効果的な疾病予防に役立つのか,というエビデンスはまだ不十分である.これは,動脈硬化性疾患自体がかなり長期に経過観察しなければその転帰がわからないことが一因であろう.将来のより良い検査法確立の長期的な観点から,本標準的評価法を多くの施設で採用していただき,多施設間のデータ統合や比較が可能な基盤データ計測法として浸透することを期待する.