Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 脳神経
シンポジウム 脳神経 超音波による頸動脈病変の標準的評価法2016:経緯と臨床への応用 Standard method for ultrasound evaluation of carotid artery lesions 2016: Process and clinical application

(S372)

頸動脈エコー標準化の経緯と要点

The Point and Details of Revised Standard Method for Ultrasound Evaluation of Carotid Artery Lesions

松尾 汎

Hiroshi MATSUO

松尾クリニック

MATSUO CLINIC

キーワード :

「生活習慣病」とは,「動脈硬化性危険因子」とされる高血圧,糖尿病,脂質異常症,喫煙などのことであるが,「全身の動脈硬化性循環障害(脳血管障害CVD,冠動脈疾患CAD,慢性腎臓病CKD,閉塞性動脈硬化症ASOなど)」の原因としても重要である.動脈硬化評価法の一つとして注目されている頸動脈エコーの臨床的意義についても,これまで幾つかの治験が報告され,その役割や限界が明らかになりつつある.日本超音波医学会では,従来の標準的評価法を,それら報告を基に改訂することが必要と考え,この度,提示された.
動脈硬化の進展における形態的変化としては,先ずIMTの肥厚が出現する.更に肥厚が進行して,プラーク形成,動脈狭窄,閉塞へと動脈硬化は進行するが,頸動脈エコーでは,IMTの詳細な評価,プラークの性状評価,狭窄部位の狭窄程度なども含めて,その進行状態を詳細に評価できる.IMT評価は生活習慣病治療の意義を明確にしたが,動脈硬化危険因子を持たない一般住民には勧められず,危険因子を有する例でも病変がない例には毎年する意義はないことも示された.
プラークとは,IMC表面に変曲点を有する1.1mm以上の限局性隆起性病変を称するが,1.5mm以下の小プラークは臨床的意義が少ないことから,通常検査での評価対象には含めず,今回の改訂では,プラーク評価の対象を「1.5mm超」に限定した.1.5mm超のプラークの評価は,存在部位と共に,その最大厚と隆起部の範囲を含めた(a)プラークサイズ(プラークを含めた最大計測値がmax IMT),(b)表面の形態,(c)内部エコー性状(輝度,均質性),(d)可動性などを評価する.脳梗塞との関連からは潰瘍形成,低輝度,不均質プラークなどが注目されている.可動性プラークの評価は,有茎性の可動性プラーク(floating plaque)やプラーク内部が拍動に伴って動揺する所見(jellyfish sigh)などに分けられ,これらも塞栓症の再発に注意が必要とし,注意喚起している.
更に病変が進行した狭窄病変の評価は,血管造影と同様に「狭窄率」が知りたいが,同様な評価をエコーで行うのは困難である.特に好発部位である膨大部以遠から内頸動脈(ICA)では,従来から血管造影法を用いたNASCET法で評価されているが,超音波法と対比した検討はなく,超音波法での信頼性は低い.従って,超音波法では「ドプラ法」を用いてNASCET狭窄率を推定することが推奨される.すなわち収縮期最大血流速度1.3m/sが50%狭窄,2m/s以上が70%以上と推定している.