英文誌(2004-)
特別プログラム 耳鼻咽喉科・頭頸部外科
シンポジウム 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 耳鼻咽喉科・頭頸部超音波診断の普及と展望
(S368)
造影超音波検査がこれからの頭頸部診療にもたらすもの
A role of contrast-enhanced ultrasonography for diagnosis and treatment of head and neck cancer
志賀 清人
Kiyoto SHIGA
岩手医科大学医学部頭頸部外科学科
Department of Head & Neck Surgery, Iwate Medical University
キーワード :
超音波造影剤ソナゾイドは日本で認可されている対象疾患が肝腫瘍と乳腺腫瘍のみである.しかし,欧米では,適応外でもほぼすべての領域の疾患に造影超音波診断の応用が試みられている.
我々は以前より造影超音波診断の有用性について頸部リンパ節を対象として検討を行ってきた.そのために造影超音波検査を動画で記録し,その画像から2次元の血管網を描出,あるいは密度の計算を行うソフトを開発した.その結果,頭頸部のリンパ節については,造影効果は肝腫瘍や乳腺腫瘍で使われているより10分の1程度のソナゾイド量で十分にリンパ節内の血管構造を描出できること,カラードップラーよりも詳細に内部構造を把握できることを明らかにした.頸部郭清術を行った症例から摘出したリンパ節の病理所見と比較することにより,造影超音波がリンパ節内の血管を捉えていることを見出したが,一部には毛細血管と思われる構造物があるにもかかわらずperfusion defectを示す転移リンパ節が有ることもわかってきた.全体に造影されるリンパ節とperfusion defectを示すリンパ節では癌細胞の浸潤の程度に差が有ることもわかってきた.以上から造影超音波を治療前に用いることにより,その転移リンパ節の病理所見を予め予想できる可能性が示された.
また,化学放射線治療を行った症例の治療前,治療中,治療後の頸部転移リンパ節の造影超音波画像からリンパ節内の血管密度を計測することにより,治療効果があるリンパ節では体積が縮小すると同時に血管密度は上昇していく現象が見出された.この現象を用いて経過を追うことにより,化学放射線治療の効果判定がより正確に行える可能性が示された.
現在,造影超音波が微小リンパ節転移を検出できるかどうかの検討を進めており,頭頸部領域での造影超音波は転移リンパ節の診断,病理組織所見の予測,治療中・治療後の治療効果の判定など様々に応用の可能な検査法といえる.