下出 祐造, 岸本 和弘, 川上 理, 熊井 理美, 中村 有加里, 石倉 友子, 能田 拓也, 山田 健太郎, 辻 裕之

Yuzo SHIMODE, Kazuhiro KISHIMOTO, Osamu KAWAKAMI, Masami KUMAI, Yukari NAKAMURA, Tomoko ISHIKURA, Takuya NODA, Kentaro YAMADA, Hiroyuki TSUJI

¹金沢医科大学頭頸部外科学講座, ²宮城県立がんセンター頭頸部外科, ³金沢医科大学耳鼻咽喉科学講座

¹Department of Head and Neck Surgery, Kanazawa Medical University, ²Department of Head and Neck Surgery, Miyagi Cancer Cente, ³Department of Otorhinolaryngology, Kanazawa Medical University

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超音波検査は被ばくをせず安全で簡便に繰り返し行うことができ，経験の積み重ねが技術の効率的な習得の一助となる．以前より当科では図示による超音波サマリを導入している．サマリの作成には画像所見とその解釈を描出する作業が必要であり，しっかりとした記載は手術時の局所所見や術後病理の組織所見との比較にも活用できフィードバック作業の可視化につながる．特に頭頸部癌の微小リンパ節転移を超音波で検出する技能の向上にはこの反復が大変重要であると考えている．
また当科では術前症例検討会でもこのサマリを活用している．頭頸部癌の手術では術前に病変を正確に把握してもっとも適切な術式を検討する必要があり，検討会ではそれらの問題点を限られた時間で的確に提示することが求められる．超音波検査は他のモダリティでは困難な微細所見の評価だけでなく，サマライズされた図は頸部全体を描出しており原発病変，リンパ節転移局在や隣接する臓器との位置関係など関心領域の把握を容易にする点でも大変有用である．
また術前の転移リンパ節局在の図示は頸部郭清術で摘出したリンパ節のマッピングにも有効である．当科では以前に甲状腺乳頭癌の外側区域リンパ節転移症例に対する至適郭清範囲の検討においてD2aとD2b郭清術の選択にN/T比が有効である可能性をしめした．その際に腫大したリンパ節とマッピングした摘出リンパ節の局在情報を照合するうえで本サマリが大いに役に立った．
またフィードバック効果は検査技師との連携でも発揮される．術前サマリに頸部郭清範囲などを追加記載した情報を共有することで再発しやすい非郭清範囲が明確となり探索範囲の効率化が期待できる．また患者や家族に対する術前や経過の説明に図示されたサマリを用いて情報提供を行うことで理解度が高まり医療に対する満足度の向上にも寄与される．
術前サマリは最終診断結果をはじめさまざまな状況で多くの情報とフィードバックを有効に行うことができ，耳鼻咽喉科や頭頸部外科領域における超音波診断の有効性をより一層高めることができると考えられる．