Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 耳鼻咽喉科・頭頸部外科
シンポジウム 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 耳鼻咽喉科・頭頸部超音波診断の普及と展望

(S367)

耳鼻咽喉科機能評価における超音波診断の応用

Ultrasonography for assessing the laryngeal function

福原 隆宏, 堂西 亮平, 松田 枝里子, 竹内 裕美

Takahiro FUKUHARA, Ryohei DONISHI, Eriko MATSUDA, Hiromi TAKEUCHI

鳥取大学医学部感覚運動医学講座耳鼻咽喉・頭頸部外科学分野

Department of Otolaryngology-Head and Neck Surgery, Tottori University Faculty of Medicine

キーワード :

【はじめに】
耳鼻咽喉科領域における超音波診断装置の活用法には様々ある.甲状腺やリンパ節の他,唾液腺や頭頸部癌の診断に用いられたり,穿刺細胞診や経皮的硬化療法などのインターベンションにも併用される.さらに頭頸部は嚥下や発声など重要な機能を担っており,これらの機能評価にも超音波診断装置は活用できる.この度は,超音波診断装置による喉頭の機能評価について紹介する.
【使用方法と手技】
初めに,超音波診断装置による声帯運動評価方法について述べる.声帯は空気に接している管腔臓器の中にある組織である.このため,観察方法の工夫やpitfallについて知っておく必要がある.まずプローベの当て方には,水平方向に当てる方法と垂直方向に当てる方法の二通りある.喉頭正面から水平に当てて声帯運動を観察した場合,両側声帯を対称に比べることができる利点はあるが,観察できる症例は6割から7割程度に限られる.喉頭の大きい男性や,軟骨の骨化が進んだ高齢者では観察不可となるためである.これに対し,ジェルパッドを当てて観察する方法や観察部位を声帯以外に仮声帯や披裂軟骨にも置く方法が提唱されている.一方,垂直方向の観察では,ほとんどの症例において観察可能となる.我々は過去に,プローベを左右別々に垂直方向に当て,被裂軟骨の運動を評価する方法を発表した.188名の対象に対し,185名で観察可能であり,声帯麻痺の診断が可能であった.しかし,不全麻痺の診断は困難であった.このように,垂直方向での観察の欠点は,左右を比較しながら観察できないため,不全麻痺が診断しにくい点となる.
このため,声帯運動を超音波診断装置で評価する場合,目的と対象に応じて観察方法を変え,時にいくつかの方法を組み合わせながら,麻痺の診断をする必要があろう.
次に,反回神経の評価のための喉頭筋電図への超音波診断装置の応用について述べる.喉頭筋電図は,体表から針電極を喉頭内の内喉頭筋に刺入しなければならず,技術が必要とされる.また,電極の針先が目的筋に刺入されているとは限らず,反応がない場合の判断が難しい.このため,近年では喉頭筋電図検査がおこなわれることは少なくなってきている.喉頭筋電図では輪状甲状間膜や甲状軟骨の形状を触診でメルクマールとしながら針電極を刺入するが,体格がよく首が太い場合,これらのメルクマールの同定は,慣れた医師でも難しい.そこで超音波診断装置を併用すると,メルクマールの同定が容易かつ確実となり,刺入し易くなる.さらに症例によっては喉頭内に刺入した電極の針先が確認できる.
【結論】
以上のように,超音波診断装置は,喉頭の機能評価にも活用することができる.