Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 耳鼻咽喉科・頭頸部外科
シンポジウム 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 耳鼻咽喉科・頭頸部超音波診断の普及と展望

(S366)

頭頸部手術における経口超音波検査の役割

The role of transoral ultrasound in Head and Neck surgery

堂西 亮平

Ryohei DONISHI

鳥取大学医学部感覚運動医学講座耳鼻咽喉・頭頸部外科学分野

Department of Otolaryngology:Head and Neck Surgery, Tottori University

キーワード :

頭頸部癌に対する根治治療は,外切開による拡大切除であったが,音声喪失や嚥下機能の低下は不可避であった.これに対して形態温存を目的とした化学放射線治療が広く行われるようになったが,形態は温存されたとしても,嚥下機能などの機能が温存されず,問題となっている.一方,近年では内視鏡技術の発展や手術機器の開発により,経口的な縮小手術が積極的におこなわれるようになってきた.経口手術は拡大切除や化学放射線治療と比較して侵襲が少なく,術後の機能温存が期待されている.しかし,経口手術では手技や解剖構造に習熟していない術者にとっては,解剖構造が複雑でその把握が困難であるために,深部方向の切除マージンの決定が難しい,血管損傷による出血のリスクが高いという問題がある.これらの問題を解消するため,当院では2016年4月以降,日立アロカメディカル社製の腹腔鏡下用プローブL43Kを用いた術中経口超音波検査を併施している.2016年4月から2016年12月の間に10例に対して術中経口超音波検査を施行した.このうち頭頸部癌は8例(中咽頭癌:2例,下咽頭癌:4例,舌癌:2例)であり,他2例は甲状腺乳頭癌のルビエールリンパ節転移と咽後膿瘍であった.頭頸部扁平上皮癌のうちT2以上の症例(T2:4例,T4a:1例)ではいずれも腫瘍の描出が可能であったが,T1以下の症例(Tis:1例,T1:2例)では1例のみで描出可能であった.10例すべてで周囲血管の描出が可能であり,描出血管の損傷を回避することができた.経口切除術において術中経口超音波検査の併用は有効と考えられる.実際の症例を提示し,経口超音波検査の今後の役割について述べる.