Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 耳鼻咽喉科・頭頸部外科
シンポジウム 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 耳鼻咽喉科・頭頸部超音波診断の普及と展望

(S366)

超音波診断による頭頸部癌リンパ節診断の普及について

Spread and recognization of ultrasound diagnosis for cervical lymph node metastasis in patients with head and neck cancer

古川 まどか

Madoka FURUKAWA

神奈川県立がんセンター頭頸部外科

Department of head and neck surgery, Kanagawa Cancer Center

キーワード :

耳鼻咽喉科・頭頸部領域は,甲状腺を除くと,これまでは立ち遅れていた分野であり,頭頸部癌の頸部リンパ節診断もかつては触診やCTが診断の主軸であった.しかし,超音波診断装置の進歩により,体表近くのリンパ節の描出や正確な所在の把握,転移病巣の検出が容易となり,触診やCTでは診断できない小リンパ節転移も検出できるようになった.このことは,より正しい診断のもと,機能や形態温存も考慮した治療方針を立てることが可能となったことを意味し,超音波診断が患者にとっても,医療者にとっても,優しく,有用な検査として位置づけられつつある.超音波診断の利点として,探触子をあてるだけで病変を描出可能で,特別な前処置が不要であること,リアルタイムに動画観察が可能であること,カラードプラ法を用いることで血流診断が可能であること,放射能被曝がなく,経過観察のための繰り返し検査も安全に施行できる点が挙げられ,頸部リンパ節診断における貢献度は非常に大きい.
以前は,良好な画像が得られる超音波診断装置はサイズも大きく価格も高かったため,外来に置くことが難しく,中央部門に設置され多忙な外来診療の合間に手軽に検査をすることが環境的に難しいという問題があったが,ここ数年で高性能な診断装置は小型化し,一方で小型の装置の画質が向上したことから,一般外来のほか病棟,手術室など必要な場所で手軽に超音波診断ができるようになったことは非常に画期的で,初診時の病期診断のみならず,治療中,治療後の治療効果判定も詳細に施行可能となった.
現在,頭頸部癌リンパ節超音波診断に関して,系統だって学習し手技を習得する機会はまだまだ少ないのが現状である.一方,一般医療の現場での超音波診断の普及は目覚ましく,医学教育,研修医教育にも取り入れられるようになってきた.頭頸部癌診療の世界でも指導者の中に超音波診断を当たり前のように使いこなす世代が増えていくことで,超音波診断は今後急速に普及し,必要不可欠なものと位置付けられていくものと考える.その際に,多くの施設,多くの医師,技師が共通認識のもと頸部リンパ節超音波診断を行い,信頼のおける良質な診断が保証されるよう,頸部リンパ節診断における標準的検査手技,用語,診断基準等の整備が求められる.