國井 葉

Yo KUNII

伊藤病院内科

Department of Internal Medicine, Ito Hospital

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ドプラ法の甲状腺結節における診断意義については，甲状腺濾胞性腫瘍の良悪性を診断する上で有用であるというもの，有用でないというもの，相反する評価の論文がみられます．多くの物事に通じるがごとく，腫瘍を白（良性）と黒（悪性）だけに2分するのは難しいことなのかもしれません．
まず，濾胞性腫瘍のどこをカットオフとし腫瘍評価を行うか考えていく必要があると思います．グレーの部分，すなわち良性と悪性の判断しかねる部分をどのように扱うかによって，評価の方法が異なるからです．例えば，悪性を見逃さないようにする場合は，グレーな部分も悪性とみなして評価していく必要があると思います．しかし，この中には良性腫瘍も少なからず含まれていきます．逆に絶対悪性という腫瘍を見つけたい場合は，一部悪性を見落としてしまう事になります．
次に，ドプラ法の画面を定量化することは難しいのですが，ガイドラインに活かすものであるならば，万人が見て同じ評価が出来るような所見を提示しないといけないと考えます．例えば，「血流が多い」とはどのような画面を指すのか？その際の，ゲインは適切なものなのか？基準を提示する必要がでてくるのではないかと思います．しかし，参考までに，AACE/AME/ETAのガイドラインを見てみますと，Chaotic or intranodular vascular imagesは悪性を示唆する所見と文章で書かれたのみになっています．
最後に唯一定量化できる，数値で表示できる，血流波形の性状を示すindexとしてPI（pulsatility index）やRI（resistance index）があります．このindexは抹消血管抵抗が血管の狭窄や腫瘍の線維化などで上昇すると高値になるものです．悪性腫瘍では，組織が硬くなりこれらの数値が上昇しやすいため，鑑別に有用と考えられています．しかし，理論上線維化の強い腫瘍などは，PI・RI値は高値になるため，この値のみで良性・悪性を鑑別するのは難しいこととなります．
Bモードが白黒コピーなら，ドプラ法は2色カラーコピーになったものだと思います．上記の問題点を考慮しつつも，ドプラ法は腫瘍をよりイメージしやすくするためのツールだと思います．