Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 甲状腺(JABTS)
ワークショップ 甲状腺 新甲状腺結節超音波診断基準策定のための血流評価多施設共同研究-結節性病変の血流評価の標準化-

(S359)

甲状腺結節診断における血流評価の有用性 -血流評価による診断率向上はあるか?-

Clinical significance of color Doppler imaging for the differential diagnosis for thyroid nodules

檜垣 直幸, 村上 司

Naoyuki HIGAKI, Tsukasa MURAKAMI

野口病院内科

Department of Endocrinology, Noguchi Thyroid Clinic and Hospital Foundation

キーワード :

超音波ドプラ法による血流分布や血流解析の有用性は様々な臓器で報告されている.甲状腺結節診断における血流評価についても多く検討がなされ,その有用性が示されている.結節内部の血流が辺縁に比べて有意な場合,また血流インデックスであるpulsatility index(PI)やresistance index(RI)が高い時に悪性結節の可能性が高くなるとされる.しかし観察時の条件設定や血流データの判定基準はなく,甲状腺結節の血流評価の標準化には至っていない.
本邦においては甲状腺癌の9割以上は乳頭癌が占める.その診断はBモード像すなわち形状不整,境界不明瞭・粗雑,内部低エコー,不均質,微細エコーなどの所見から可能なことが多い.一方濾胞性腫瘍の良悪性の診断,濾胞腺腫と濾胞癌の鑑別診断は容易ではない.濾胞癌のBモード像の特徴所見として腫瘍内部が充実性,不均質な内部エコー,不整な境界部低エコー帯などがある.血流評価においては内部の血管が豊富で,そのPI,RI値が高いとの報告がある.これらBモード像,また血流評価の組み合わせにより術前に濾胞癌を疑えることもある.当院で手術療法を行った濾胞腺腫244例,濾胞癌49例の検討においても腫瘍内部のPI,RIともに濾胞癌で有意に高値であった.またBモード像で形状不整,境界不明瞭,内部低エコー,内部エコー不均質,高エコー有り,境界部低エコー帯の不整または無し,嚢胞所見なしの各所見の陽性率は濾胞癌で有意に高かった.さらにそれら7項目のうち4項目以上を満たしたものを濾胞癌とすると感度57.1%,特異度87.3%,正診率は82.3%PI値1.27以上を濾胞癌とすると感度54.8%,特異度74.4%,正診率71.3%であった.以上より濾胞性腫瘍の鑑別にその血流所見を加味すると濾胞癌を疑う症例の拾い上げに有用な可能性があると思われた.
甲状腺結節の診断にはBモード所見がもっとも重要である.血流所見を加味することで,より良悪性結節の鑑別が可能となると思われる.