Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 甲状腺(JABTS)
パネルディスカッション 甲状腺 びまん性甲状腺疾患の血流評価:軽症甲状腺中毒症の鑑別における超音波検査の有用性

(S356)

甲状腺中毒症の鑑別診断 ~超音波血流評価の位置づけ~

Differential diagnosis of thyrotoxicosis by the doppler sonography

内田 豊義

Toyoyoshi UCHIDA

順天堂大学大学院医学研究科代謝内分泌内科学

Department of Metabolism & Endocrinology, Juntendo University Graduate School of Medicine

キーワード :

日常診療で遭遇する甲状腺中毒症の主な原因にバセドウ病と無痛性甲状腺炎がある.適切な治療方針決定のためにバセドウ病と無痛性甲状腺炎の診断は極めて重要である.両者の鑑別診断において非侵襲的な方法に血液検査によるFT3/FT4比やTSH受容体抗体(TRAb)価測定および超音波検査と侵襲的な方法に核医学検査(99m-Tc)がある.FT3/FT4比は感度・特異度が低く,TRAbにおいても3.0IU/L未満にはグレーゾーンが存在することから,完璧な検査ではない.つまり,バセドウ病と無痛性甲状腺炎の鑑別には,他の検査所見も合わせて鑑別すべきであることを示唆している.そこで鑑別に有用とされる血流評価に用いる超音波ドプラ法には,速度モードとパワーモードがあり,一般にパワーモードを用いた甲状腺内血流量の増加がバセドウ病に特徴的とされ,汎用されている.我々は,ドプラ法の速度モードにて計測した上甲状腺動脈収縮期平均血流速度(STA-PSV)のある閾値(45cm/sec)を用いることでバセドウ病と無痛性甲状腺炎の鑑別に有用であることを示したが,STA-PSVにもグレーゾーンが存在することも明らかとなった(Endocr J, 2010).このグレーゾーンに属するバセドウ病の臨床像は無痛性甲状腺炎と酷似していた.一方,パワーモードにて半定量的に評価した甲状腺内血流量と甲状腺機能亢進症の重症度,STA-PSV,TRAb価との関連性を明らかにする中で,甲状腺内血流量の増加をほとんど認めないバセドウ病(P0GD)が存在し,その有所見率,臨床像について明らかにした(JUM, 2014).予想通り,P0GDの臨床像は無痛性甲状腺炎と酷似しており,STA-PSVを用いてもP0GDは無痛性甲状腺炎との鑑別が困難であり,現時点では診断能に限界があることが分かった.しかしながら,超音波血流評価により,禁忌が存在し,高価な放射性ヨウ素摂取率測定を行う患者を最小限に絞り込むことができる.このような鑑別困難な患者に対する次の一手として,我々の算出した最適な99m-Tc摂取率閾値1.0%(Endocr J, 2016)を用いて積極的に鑑別するか,診断的治療を含めた臨床的アプローチのいずれかを選択することになる.以上から超音波血流評価を中心に据えた甲状腺中毒症の鑑別診断が重要であると考えている.