松田 枝里子, 福原 隆宏, 堂西 亮平, 竹内 裕美

Eriko MATSUDA, Takahiro FUKUHARA, Ryohei DONISHI, Hiromi TAKEUCHI

鳥取大学医学部感覚運動医学講座耳鼻咽喉・頭頸部外科学分野

Department of Otolaryngology-Head and Neck Surgery, Tottori University Faculty of Medicine

キーワード :

超音波検査機器の表在用のリニアプローブは，他の画像モダリティと比較して分解能が高く，表在臓器の評価に有用と考えられる．しかし超音波診断には経験と知識が必要であり，その領域の初心者にとっては，検査手技や所見の表現法などが定まっていなければ習得が難しい．現在，頸部リンパ節の超音波診断においては，これらの詳細なルールが定まっていない．このため，頭頸部領域の超音波検査は習熟に時間を要し，施設間や検査者間での差も生じやすい．このたびは，頸部リンパ節における所見の取り方や表現法に関する問題点を考える．
頸部リンパ節の超音波検査では，大きさや位置，内部構造，血流など様々な情報が得られる．それらの記録にあたり最も基本となる情報は，リンパ節の大きさと位置であるが，この基本的事項に関してさえ，いくつかの問題点がある．
はじめに大きさの表現法と記載に関する問題点を挙げる．まず，大きさの計測方法について記したガイドラインがない．過去の文献で見られる表現も一定ではなく，多くは2方向での計測となっている．しかし，リンパ節は実際には立体であり，3方向での表現が適していると思われる．よって長径と短径，厚みの3方向の表記方法が提案されている．この場合もリンパ節のどの軸を基準として3方向を計測するかが問題となる．また，計測方法によって用語も異なり，混乱を避ける必要がある．
次に，頸部リンパ節の位置を表現する場合，複数の分類法があるため混乱が生じている．頭頸部癌における頭頸部癌取扱い規約や米国のレベル分類，甲状腺癌における甲状腺癌取扱い規約などの記載方法がある．このように，さまざまな表記方法がある中で，原発不明癌の転移リンパ節や悪性腫瘍ではない反応性リンパ節腫大では，どのように表現すべきか，ということも問題である．
以上のように，頸部リンパ節の超音波検査では，その基本的事項である大きさや位置の表記にさえ迷ってしまうという問題を抱えている．よって今後はこれらの用語や表現法を整備していくことが急務と考える．