Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 甲状腺(JABTS)
シンポジウム 甲状腺2 表在リンパ節の超音波診断

(S353)

リンパ節の計測法に関する問題点

Problems about measurement of lymph nodes

花井 信広

Nobuhiro HANAI

愛知県がんセンター中央病院頭頸部外科

Department of Head and Neck Surgery, Aichi Cancer Center Hospital

キーワード :

頸部リンパ節の転移診断において現時点では大きさを転移陽性の診断基準とするのが良いと考えられる.リンパ節の長径,短径,厚みを比べると,厚みが最も良い指標となると考えられ,厚み6mm以上のリンパ節を原則として転移陽性としている.我々はこの超音波による有用な診断方法を客観性のある検査法として広く普及させていきたいと考えている.これが明確な診断基準,客観的な評価基準となる前提として,この3方向測定における長径,短径,厚みという用語,またそれらの定義,計測法について混乱を防ぐ意味でも一致した見解が出されるべきである.
例えば対象のリンパ節とプローブのなす角が異なる場合,短径と厚みの区別は曖昧なものとなる.ある論文では厚みはリンパ節の体軸に向かう方向で測定すると表現されているが,側頸部に位置するリンパ節と顎下に位置するリンパ節では測定の向きは全く異なっている.CTの横断像を参考として計測軸を固定するという方法も考えられなくはないが,それでは顎下のリンパ節をどのように計測するか,という問題が生ずる.超音波によって描出されるリンパ節は,検査の特性上CTの横断像とは一致するものではないため,検者が異なっても同じように測定されるための基準が必要となる.
乳腺や甲状腺は原発巣そのものの大きさを計測対象としているのに対し,リンパ節転移の場合はリンパ節内の転移巣そのものの大きさでなくリンパ節の大きさを対象としている.このことはリンパ節計測が他領域と異なっている点である.またリンパ節の向きが様々であったり,形状が必ずしも楕円体でないなど,計測軸を固定しようとする際には問題が生じ易い.
超音波医学33巻3号に掲載された古川らの総説によれば,彼らの行っている方法として,プローブを皮膚に垂直に当てて測定すると表現されている.この場合リンパ節は必ずしもその長軸が皮膚に平行ではないため,プローブを皮膚に垂直に当てた場合,短径を含む平面と長径を含む平面での厚みにはわずかな誤差が生じることとなる.
これまでこれらの測定,捉え方は超音波診断に慣れたもの同士で常識的にあるいは慣習的に理解されてきたが,部外者にも理解できるような形で明示される必要がある.異なった解釈がされている場合や,あいまいに理解されている場合,誤解を生じるもととなるだけでなく,後々大きな問題となることが考えられる.それぞれの解釈でデータを集積した場合,それらを同じように比較検討することは困難だからである.頸部リンパ節の超音波検査が客観的であると認識されるためには,用語を正確に定め,検者によって異ならない測定法をわかり易く決めていく事が重要であると考えられる.