Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 甲状腺(JABTS)
シンポジウム 甲状腺2 表在リンパ節の超音波診断

(S352)

頸部リンパ節診断手順の現状について

Current procedure for ultrasound diagnosis of cervical lymph node

古川 まどか

Madoka FURUKAWA

神奈川県立がんセンター頭頸部外科

Department of head and neck surgery, Kanagawa Cancer Center

キーワード :

頸部は多くのリンパ節が存在する領域であり,超音波診断の際には特定の部位だけを観察するのではなく,可能な限り頸部全体のリンパ節所見を観察しなくてはならない.これまで,頸部領域の超音波診断はそれぞれの施設や検査者のやり方で施行されてきた経緯があった.しかし,各施設,各検査者がそれぞれ独自の診断手順で行っているうちは頸部超音波診断の信頼度は低いままであるため,頸部全体を観察する標準的手法や,所見を記録し表現するための用語とその定義,診断基準等を明確にし,普及させることが必須である.
頸頸部リンパ節超音波診断で大切なことは,頸部に適した超音波機器と画像設定および探触子を正しく選択すること,頸部の筋緊張を取り除いた体位で,明らかに病変が存在する部位だけではなく必ず頸部全体を観察すること,超音波像と頸部の解剖を照合しながらリンパ節の領域を明らかにすることが挙げられる.さらに,腫大したリンパ節の詳細な診断においては,リンパ節を立体構造物として観察し,リンパ節の全体像から異常所見を検出することが重要である.この場合,B-モードだけではなくカラードプラによるリンパ節内外の血流イメージングが有用になってくる.実技講習会や動画による手技の普及や,検査手技に関するテキストの作成に関して,多施設で協力しながら現在取り組んでいるところである.
頸部リンパ節の診断では,病変を検出するほか,リンパ節以外の頸部腫瘤・腫脹をきたす疾患を鑑別することも非常に重要で頸部疾患の知識も必要である.耳鼻咽喉科・頭頸部外科医が自ら超音波診断を行わず,検査室に検査を依頼する施設も多く,その場合には検査依頼の方法,臨床データの共有や臨床医と検査室との情報交換,診断結果のフィードバックといった体制作りが非常に重要になってくる.各施設での超音波診療モデルを想定し,各パターンにも適応可能なモデルケースを想定し,頸部リンパ節超音波診断を正しく臨床に取り入れる基盤づくりを行うことや,耳鼻咽喉科・頭頸部外科臨床医の超音波診断活用をさらに啓発することなど,まだまだ今後の課題は多いが,一歩一歩前進しつつあると考える.