Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 甲状腺(JABTS)
シンポジウム 甲状腺1 小児甲状腺の超音波診断

(S350)

小児における甲状腺結節の精査基準

Further Examination Criteria of Thyroid Nodule in Childhood

貴田岡 正史

Masafumi KITAOKA

イムス三芳総合病院内分泌・代謝センター

Endocrinology and Metabolism Center, IMS Miyoshi General Hospital

キーワード :

これまで小児について甲状腺超音波診断に関する臨床知見の集積は,多数例の長期的経過観察が困難な事もあり極めて不十分であった.福島第一原発事故後の福島県県民健康調査の一環として,事故当時18歳以下の県民全員約36万人を対象に甲状腺超音波検査が2011年より経時的に実施されている.その過程で年齢別に差異が認められるものの,甲状腺に結節性病変が一定の割合で存在することが明らかとなった.その取扱いをいかに適正化していくかは極めて重要な問題であったが,これまで小児独自の甲状腺結節精査基準はその必要性まで含めて基となる知見が不十分なため明確ではなかった.その時点での最良の選択肢として成人の甲状腺結節精査基準に準じて運用されてきたのが現実である.
一方,福島県県民健康調査における小児甲状腺超音波検診の結果に基づいて,日本人における小児甲状腺のサイズについて年齢,性別に標準値が初めて示された.
当然成人に比して甲状腺は年齢が低いほど小さく,同一のサイズの結節であれば甲状腺にしめる割合はそれに比例して大きくなる.このことは甲状腺内の病変と周囲臓器との関係を規定する要素の一つであり,この点を考慮すると成人の精査基準より小さいサイズから精査対処とする必要があるか否かが問題となる.また長期予後に関する成績も重要で残された検討課題は多い.
小児甲状腺癌の症例も集積されつつあり,その臨床像も徐々に明確になりつつある.独自の小児甲状腺結節精査基準が必要か否かを明確にしていくことがこれからの重要な課題であり,現在まで得られた知見とともに今後検討が必要とされる問題点を明らかにし,これからの方向性を見出していきたい.