Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 甲状腺(JABTS)
シンポジウム 甲状腺1 小児甲状腺の超音波診断

(S349)

小児における甲状腺癌の超音波所見

Ultrasound findings of childhood thyroid cancer

鈴木 眞一

Shinichi SUZUKI

福島県立医科大学医学部甲状腺内分泌学講座

Thyroid and Endocrinology, Fukushima Medical University School of Medicine

キーワード :

小児甲状腺癌は比較的稀なものとされているが,一方,15歳以下の小児ではなく,15歳~30歳前後の思春期・若年成人(Adolescent and Young Adult,以下AYA)の患者さんに発症する「がん」としては,甲状腺がんはむしろ少なくない.小児若年者甲状腺癌の超音波所見につき自験例をもとに解説する.
術前診断は現時点では甲状腺超音波ガイドブックの精査基準である「診断の進め方」に準拠して行なっている.小児若年者甲状腺がんは国内外いずれも乳頭癌が圧倒的に多い.方法は超音波診断として,Bモード検査,ドプラ法そしてエラストグラフィによる診断を実施している.
乳頭がんでは古典型(通常型)が多く認められる.しかし,超音波検査での特徴は様々であり,浸潤型の乳頭がんが多く,リンパ節転移も高頻度に認められる.外側リンパ節に関しては超音波検査での発見が容易である一方気管周囲のリンパ節転移は術前に発見されないことが多い.また,腺内散布像が多く砂粒小体などの石灰化があり,超音波像としては腫瘍外に高エコースポットの散布像が見られる.原発腫瘍は低エコー,形状不整,境界不明瞭粗雑,内部エコー低で不均質,内部微細高エコー多発,境界部低エコー帯なしないし不整が特徴的であり,小児甲状腺癌検診では超音波ガイドブックに準拠しているので,微小がんではいわゆる被胞型は一見境界明瞭で良性に見える,このような形は細胞診を試行しないので成人では存在が分かっているが,検診や臨床では認められていない.乳頭がんの特殊型としては,チェルノブイリでよく認められた充実型や濾胞型,びまん性硬化型,篩型などが時折認められる.小児では特に細胞診をしないで超音波検査のみでほぼ確定診断ができるものを増やすことが重要である.また術後のサーベイランスにも超音波検査は重要である.特徴をまとめると1)乳頭癌(通常型)が多い,2)浸潤型が多く境界不明瞭,3)リンパ節転移が多い,4)びまん性硬化型乳頭癌類似の腺内散布像を認める,5)特殊型もあることを念頭に置くが,乳頭癌の術前診断が重要,6)ドプラ法,エラストグラフィも有用7)術前術後のリンパ節の超音波診断が重要,となる.今後も小児若年者の甲状腺癌に関しては術前術後の超音波検査は極めて重要である.