Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 甲状腺(JABTS)
シンポジウム 甲状腺1 小児甲状腺の超音波診断

(S349)

健常小児の甲状腺超音波所見

Ultrasonographic findings of normal thyroid in Japanese children.

鈴木 悟

Satoru SUZUKI

ふくしま国際医療科学センター甲状腺・内分泌診療センター

Clinical Center for Thyroid and Endocrine Disease, Fukushima Global Medical Science Center

キーワード :

福島県では,東日本大震災当時18歳以下の住民を対象に超音波による甲状腺検査を行っている.この検査のなかで明らかとなってきた健常小児の甲状腺超音波所見について既報の論文と検査結果報告から概説する.福島県における検査は,主に結節病変を見つけることが目的だが,同時に甲状腺の大きさの評価を,幅,厚さ,縦の長さを測定することにより行っている.年齢別,体表面積別の男女それぞれの測定値を明らかにし左右の甲状腺の体積を評価した.女子では13歳,男子では15歳くらいまで甲状腺体積は増加し,その後一定の値となった.体表面積あたりでは,ほぼ直線関係が得られた.右葉の方が左葉より大きかった.体表面積で補正すると女性で有意に大きかった.これらの標準値を得られたことにより,甲状腺の大きさの評価が可能となった.
異所性胸腺は,胸腺退縮の際の遺残と考えられている甲状腺内所見である.超音波上,微細高エコーを認めることがあり,形状から乳頭癌と鑑別がつきにくい.この頻度を,男女,年齢,body mass index(BMI)を調整し年齢群を0-4,5-9,10-14,15-19歳として比較検討した.10-14歳の群では,有意に男性に多く,BMI上昇でも独立の因子として頻度減少となった.異所性胸腺の退縮は,年齢以外にも,性,BMIに独立に影響を受けていることが明らかにされた.10-14歳の年齢集団で顕著な変化が観察されたことは胸腺の退縮が年齢そのものだけではなく,特に二次性徴発現や体重変化といった別のメカニズムをも介して影響していると考えられる.
嚢胞は,男女とも幼少時から増加が認められ,13-15歳でほぼ2/3の頻度で認められる.女性で優位である.高頻度に認める所見だが,20mm以上の大きな嚢胞の頻度は0.004%と低い.
頸部痛,腫大など,頸部における愁訴を認めた場合,超音波検査を施行する機会が増えてきている.正常所見の理解の一助になれば幸いである.