Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 甲状腺(JABTS)
シンポジウム 甲状腺1 小児甲状腺の超音波診断

(S348)

小児における甲状腺結節・がんの疫学

Epidemiology of thyroid nodule and cancer in childhhood

志村 浩己

Hiroki SHIMURA

福島県立医科大学臨床検査医学講座

Department of Laboratory Medicine, Fukushima Medical University

キーワード :

成人において甲状腺は結節の有病率が極めて高く,甲状腺超音波検査を行う事により,20%前後の被検者において結節が発見され,甲状腺癌の発見率も0.5%前後と高い.さらに,成人では剖検において潜在癌が非常に高頻度に発見され,2-3mm間隔にて甲状腺組織を詳細に検索すると,15%前後に微小乳頭癌が発見されると報告されている.その一方,小児における甲状腺結節およびがんの疫学的知見は非常に限られている.
1.小児における甲状腺結節の疫学
小児における甲状腺結節の検出率を検討した報告は少ないが,過去の超音波検査を用いた報告においては,0.5 - 2.1%程度と報告され,より高年齢層において高い検出率が認められることが示されていた.
東日本大震災後に福島県において超音波検査を用いた県民健康調査「甲状腺検査」が開始され,震災3年以内に一巡目の「先行検査」が行われた.それでは,甲状腺結節は震災時0 - 18歳の住民の1.3%に認められ,年齢に比例した上昇と性差(女性>男性)が認められた.2013年度に青森・山梨・長崎県の三県で3-18歳の小児に対して行われた研究でも,甲状腺結節の発見率は1.6%と福島県での結果と同様であった.
2.小児における甲状腺がんの疫学
小児における甲状腺がんの罹患率は,米国におけるcancer registryでは,0-4,5-9,10-14,15-19歳においてそれぞれ100万人あたり0.04,0.43,3.50,15.16人と報告されており,日本もほぼ同様である.しかし,比較的増大が緩徐な甲状腺がんでは,罹患率より横断的研究で示される発見率の方が高くなるとともに,横断的なスクリーニングでは,一般診療における診断より早期に発見されることにより,頻度はさらに上昇すると考えられる.
小児に対するスクリーニングにおける甲状腺がんの発見率は,過去には触診による頻度が0.04%であったことが報告されている.一方,福島県における甲状腺検査では,超音波検査により発見された結節に対し,一定の精査基準に従い診断を行っているが,先行検査において全受診者の0.038%が甲状腺がんと診断され,ほぼ同様の頻度であった.さらに,前述の三県での調査でも,同様の発見率であったことが報告されている.
福島県の甲状腺検査の開始以来,小児・若年者における甲状腺結節・がんの疫学的知見は集積されつつある.今後,これらの詳細な分析により,福島県における甲状腺検査のみならず,小児・若年者の甲状腺結節・がんの診療にも資すると考えられる.